放課後、屋上で寝ている男子生徒一名発見。この時期、こんなところで寝たら風邪引くだろうに。
半分呆れながら見つめると、奴の瞼が少し動いた。起きたのかな。

「なーにやってんの」

寝ぼけた顔で、ああ、と伊勢は返事した。それ返事になってないんだけど、と思ったけど寝ぼけてるんだからしょうがないか、と思いなおした。
伊勢はゆっくり起き上がると、眩しそうに夕陽を見た。開ききっていなかった瞼が少しずつ持ち上がる。それから、大きな欠伸を一つして、やっと覚醒したようだ。

「お前こそ、何やってんだよ」
「教室から夕焼け、綺麗に見えたから。せっかくだから、屋上からも見てみようかな、と」

こんな真っ赤な夕焼け、久しぶりに見た。焼けた空、って今日みたいな空を言うんじゃないだろうか。
空が好き、というわけじゃないけど、こんなに綺麗なもの、見なきゃ損だと思うんだ。

「夕焼けなんざ、どこで見たって一緒だろ」
「まあ、それはそうなんだけど。今日暇だし、真っ直ぐ家に帰ってももったいないじゃん」
「…暇人」
「こんなところで寝てる人に言われたくないなあ」

伊勢は少しムッとしたようだけど、文句を言うのも面倒なのか特に何も言わずそのまま前を向いた。
二人で夕焼けを見つめる、というのは、何だか…なんていうかね。ドキドキするというか。
会話は全くロマンチックではないのに、このシチュエーションがいつもと違う雰囲気を醸し出している。

「伊勢は、何で」

ここで寝てたの、という続きは言えなかった。
伊勢の唇が、私のそれを塞いでる。キスされた、ってこと。

「……」

私が何も言わないで目を丸くしていると(正確には何も言えなかったんだけど)、伊勢は「間抜け面」と呟いた。

「…誰のせいよ」
「さあ」
「…一つ、聞いていい?」
「あ?」

これって、夢じゃないんだよね?と聞いたら、夢ならあの夕陽でも昇らせてみろ、と言われた。
大丈夫、夕陽は昇らず沈んでいくだけ。
伊勢はもう一度私にキスをする。夕陽が沈み、唇の感触もはっきりとしていて、これは間違いなく現実のようだ。





















Sunset Rise
サンセット・ライズ

08.03.03

伊勢兄が告白するシーンがどうしても思い浮かばなくて結局いきなりキスさせるはめになった。