「いただきまーす!」
「いただきます」

屋上で黒子くんと二人一緒にお昼ごはん。
週に何回かは黒子くんと一緒にお昼を食べている。

「黒子くんって購買派なんだね」
「そうですね、親も忙しいので…。さんはお弁当なんですね」
「うん」
「おいしそうです」
「えへへ」
「…もしかして、さんが作ってるんですか?」
「え?」
「今照れていたので」
「あ、そっか…」

黒子くんの言う通り、お弁当は私が自分で作っている。
両親共働きだし、お弁当作るのは嫌いじゃないし。

「すごいですね」
「いやーほとんど冷凍食品だもん」
「でもすごいですよ」

そんなふうに褒められれば、悪い気はしない。
確かに毎朝早めに起きてお弁当の準備するのは大変だから、そう言ってもらえるとすごく嬉しい。

「……」
「黒子くん?」
「あ、なんでもないです」

黒子くんは私のお弁当を見つめて黙ってしまう。
「なんでもない」と言われたけど、きっとなんでもなくない。

あ、もしかして…。

「黒子くん、今度お弁当作ってこようか?」

お弁当をじっと見ていたのはそう思っていたからかな。
黒子くんは遠慮がちだから、私に気を遣って言わなかったんだろう。
そう思って、申し出てみると、黒子くんは目を丸くした。

「…いいんですか?大変ですよ?」
「大丈夫だよ、一人分も二人分もそんなに変わらないし」

これが火神くんに作るんだったらそりゃあ大変だろうけど、黒子くんはそんなに大食漢じゃない。
お弁当を作るのはそこまで苦じゃない。

「じゃあ、お願いします」
「承りました!」

黒子くんにお弁当を作る、か。
ちょっと楽しみだ。





ということで、次の日早速黒子くんにお弁当を作ってきた。

「はい、どうぞ!」
「ありがとうございます」

そう言って黒子くんにお弁当を差し出す。
一応毎日作ってるだけあって、それなりに自信がある。

「いただきます」

黒子くんはお弁当を開けた瞬間、固まる。
え、え!?そんな変なもの入れてないよね?!

「く、黒子くん?」
「あ、すみません、嬉しくてフリーズしてました」
「ふ、フリーズ?」
「…好きな人にハートマークのお弁当作ってもらうのって、嬉しいですね」

そう言って黒子くんは微笑んだ。
そう、ちょっと気合を入れてお弁当のご飯を桜でんぶでハートマークにしてみたのだ。

「え、えへへ」
「しかもおいしいです」
「あ、ありがとう」

…なんだか、胸の奥が熱くなってくる。
好きな人が、自分の作ったお弁当を食べてくれることが、それをおいしいと言ってくれることが、こんなに嬉しいなんて。

さんも食べてください」
「えっ?」
「自分のお弁当、開けてもいませんから…」
「あ、そうだ」

黒子くんの食べる姿ばかり見て、自分のお弁当に手を付けていなかったことに気付く。
食べなきゃ、お昼休みが終わっちゃう。

「…さん、あの」
「ん?」
「お弁当作るの、大変でしょうけど…」
「?」
「また作ってもらえますか」

黒子くんは神妙な顔つきでそう言ってくる。
だから私は思わず笑ってしまった。

「ひどいです」
「ご、ごめん、そうじゃなくて」
「……」
「そんな真剣な顔で言わなくても、いつでも作るよ」
「…ありがとうございます」
「だって私も、黒子くんがおいしいって言って食べてくれるの、嬉しいから」

そう言うと、黒子くんは優しい顔で笑ってくれた。

「それはよかったです」
「うん」
「でも、きっとボクのほうが嬉しいです」
「そんなことないよ。私のほうが嬉しい!」
「いや、絶対ボクです」
「いや、私だよ」
「……」
「……」
「じゃあ、どっちも同じくらい嬉しいと言うことで」
「…そうですね」












世界で一番素敵なごはん
13.07.17

お弁当シリーズ
地味に火神のとセットのイメージです

お弁当を食べると言えばこういう話だろう!っていう王道バージョン





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