ちーん、お菓子ちょうだい〜」
「はいはい」

10月31日、ハロウィン。部活が終了して帰り支度をしているとき、予想通り敦がやってきた。
絶対に敦が欲しがるだろうとお菓子をたくさん持ってきておいてよかった。

「え〜、これだけ?」
「え、まだ欲しいの?」

とりあえずこれだけあげとけば大丈夫だろう、と思って渡したお菓子はあっという間に平らげられた。
これ以上あげたらお菓子なくなっちゃうんだけど…。
うーん、まあ、一通り部員皆にあげたし、部活も終わったし、大丈夫だよね…。

「じゃあ、はい。これでもう全部だからね」
「やった〜」

持ってきた紙袋ごとお菓子を渡すと、敦は満足そうに笑う。
「ありがとー」と言ってスキップ気味に去っていった。
あんなふうに喜ばれると、こちらも嬉しい。笑顔で敦の背中を見送った。



「あ、氷室、もう帰れる?」
「うん」

さて、氷室も来たことだし帰ろう。
帰り道を並んで歩きだす。

「敦、お菓子抱えて幸せそうだったね」
「ねー、あんなに喜ばれるとあげ甲斐があるなあ」
「…そういえば、オレからもらってないな」
「え」

あれ、部活が始まる前にみんなの前で紙袋を広げてお菓子を持ってってもらったけど、そのとき氷室はいなかったっけ。
思い返してみると、その場に氷室はいたけど、確かに氷室がお菓子を持っていた記憶はない。
でも、あの場にいたんだし、普通に持って行ってたと思ってた。

「氷室、お菓子持ってってないの…?」
「うん、オレが持ってく前になくなっちゃったかね」

なんか、不味い気がする。よりによって氷室の手にお菓子が渡っていないとは。
と言っても、もう手元にお菓子は残ってない。

「あ、ね、ねえ、お菓子買ってこようか?」
「いいよ、ここにあるから」

そう言って氷室は私をキスにする。
や、やっぱりか…!

「あ、の、氷室」

少し待って、と言うより前にもう一度キスをされる。
ほ、本当に待って!これはまずい!すごくまずい!

「ね、ねえ、ちょっと待って」
「もっと欲しいな、お菓子」

予想通りの氷室の言葉に、体を強張らせる。

「…それ、断ったら」
「悪戯するよ?」

薄く笑いながら氷室は言った。
あの、それ、結果は一緒ですよね?
そんなこと言えるわけもなく、再び長いキス。
あのとき敦に全部あげなければ…と後悔してももう遅い。


















sweets
12.10.31

結局自分のいいように持って行く氷室さん
多分ヒロインがお菓子持ってたら持ってたで適当に丸め込むんだと思います








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