『今日先輩がさ、ミーティングのときカノジョからの弁当食べててさー』
「へえ。愛妻弁当?」
『だよな!そう言っちゃうよな!オレもそう言ったらそれで先輩めっちゃ怒っちゃってさー』
「あはは。あの怒りっぽい先輩でしょ?」
『そうそう。その先輩がハートマークの弁当持ってきたんだぜ?こっちだってびっくりするっつーの』
「ハートマーク?」
『そ、あのピンクのやつ』
「へえ〜」

夜、高尾くんと電話でおしゃべり。
学校も違うし、お互い部活で忙しい身だからとても貴重な時間だ。

『そういや、今度の日曜さ』
「うん」
『11時に駅でOK?』
「うん、大丈夫」
『どっかで昼飯食った後うろうろしよーぜ。ゲーセンとか好き?』
「んー…友達とプリクラ撮ったくらいかなあ。案内してね」
『もち』
「楽しみにしてるね」

そんな話をして電話を切った。
日曜、か…。





「あ、ごめん、遅くなって」
「いや、まだ時間前だし焦んなくて大丈夫」

日曜日、待ち合わせ時間に駅に向かうと高尾くんはすでにいた。

「んじゃ飯食おっか。なんか食いたいもんある?」
「あ、その」
「?」
「実はね、お弁当を…」
「弁当っ!?」
「う、うん」

この間、高尾くんが電話で言っていた先輩の話。
私も作ってみようかな、と。

「うわ、やべえ。超嬉しい…」
「う、うん…公園とかで食べる?」
「うん。確かあっちに結構でかい公園あったはず」

二人で公園へ向かう。
あ、なんかすごい緊張してきた。

作ってきたはいいけどちゃんとおいしく作れているだろうか。
い、一応結構料理はする方だと思うんだけど。
ちゃんと高尾くんの口に合うだろうか。

?」
「えっ?」
「公園着いたぜ。ボーっとしてっけど、平気?」
「あ、ご、ごめん!大丈夫」

もうここまで来たらうだうだ考えても仕方ない。
覚悟を決めなくちゃ。

「じゃ、その、どうぞ…」
「頂きます!」

高尾くんは大きな声そう言って、お弁当箱の蓋を開ける。

「……」
「……」
「…ハートマーク」
「は、ハートマークです」

そう、ピンクのハートマーク。
高尾くんが電話で言っていたやつ。
ちょっと恥ずかしいけど、恋人に作るなら、やっぱり…。

「やばい。超嬉しい」
「た、高尾くん」

高尾くんはベンチにぐでっと寄りかかって空を仰ぐ。

「…先輩の弁当見た時さ」
「うん」
「めっちゃうらやましかったんだよね」
「…うん」
「オレら学校違うし、あーいうふうに弁当作ってもらうの無理だなーって。なんか悔しいなって」
「…うん」
「だからホント…」
「うん」
「…サンキュ」

高尾くんはいつもみたいな楽しそうな笑顔じゃなくて、優しく微笑んでそう言った。

「…確かに、マメに作ったりとか、そういうのできないけど」
「うん」
「また作って来るから…また、一緒に食べよう」
「…ん」

高尾くんは頷く。
喜んでくれるかな、そう思って作ったはずなのに、私の方が嬉しいや。









また一緒に
13.11.04

間が空いちゃったけどお弁当シリーズ!
「10年後の話」と同じヒロインのイメージだったんですけどそれにしては大人しすぎたかも
それでもって宮地のお弁当シリーズとリンクしてます





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