「はあ!?お前らまだ手も繋いでねーの!?」
「うるさいです、高尾くん」
「いやー、真ちゃん奥手そーって思ってたけどそこまでとはなー」
私の前の席で好き放題喋るクラスメイトの高尾くん。
なぜ私はうっかり高尾くんに緑間くんと付き合って一ヶ月経つのに、今も一緒に帰ってるだけで手すら繋いでいないということを話してしまったんだろう…。
「そりゃ、オレと真ちゃんが仲良いからだろ?」
「うん、まあ、そうなんだけど…」
緑間くんと一番仲がいいのはおそらく高尾くんだろう。
だから、私は聞いてみたかったのだ。
「緑間くんは、本当に私のことが好きなのか」を。
「好きに決まってんじゃん」
「…だって、まだ手も繋いでくれないんだよ」
「真ちゃん奥手なだけだって。が他の男と話してるだけでめっちゃ相手の男睨んでるし、と付き合い始めてからもう帰る準備早いのなんのって」
「…本当?」
「オレ、こう見えても正直者よ?」
…うん。わかってる。高尾くんは第一印象こそ軽そうだけど、こういうとき、ちゃんと話を聞いてくれる。
「一回自分から言ってみれば?『手つなぎたいのー』って」
「え、でも、そんなの、私から言うのって変じゃない?」
「変じゃねーって。惚れた女にそんなこと言われて喜ばねー男なんていねーよ」
高尾くんの言葉に少し胸を熱くする。
手を繋ぎたい、って、言っていいのかな。
「…、こんなところにいたのか」
「あ、緑間くん」
名前を呼ばれて振り向くと、教室の入り口に部活を終えた緑間くんが立っていた。
「…高尾、何を話していたのだよ」
「やだー、真ちゃんヤキモチ?」
「なっ…ち、違うのだよ!」
「いいっていいって。照れんなよ?第一、話してたのも真ちゃんのことなんだから」
「!た、高尾くん!」
「んじゃ、うまくやれよ、お二人さん」
手を振って高尾くんは足早に去って行った。
ちら、と緑間くんを見ると、私と同じく少し顔を赤くしてるのが見えた。
さっきの高尾くんの言葉は本当なんだと思うと、少し安心する。
「…、帰るのだよ」
「うん」
そう言って、緑間くんの右隣を歩き出した。
階段を下りて、昇降口を出て、駅へ向かう途中もずっと、二人とも手は宙ぶらりんのままだ。
「今日の練習、どうだった?」
「いつもと変わらないのだよ。快調だ」
「そっか、よかったね」
そんな会話をしながら、横目で緑間くんの右手を見つめる。
そして、高尾くんの言葉を思い出す。
「惚れた女にそんなこと言われて喜ばねー男なんていねーよ」
「、どうしたのだよ?」
「えっ?」
「ボーっとしているぞ」
「あ…」
「何か考え事か?」
考え事。
そう、考えている。ずっと、緑間くんの隣を歩くようになってから。
言ってもいいのかな。…嫌われたりは、しないかな。
「?」
「…あの、ね」
「ああ」
「その、手を、繋ぎたいです」
私の言葉に緑間くんは目を丸くする。
ど、どうだろう。やっぱり、ダメかな。
「…」
「う、うん」
「気が利かなくてすまないな」
そう言って、緑間くんは右手で私の手を取った。
緑間くんの手は少し冷たいけど、なぜか暖かい。
「ありがとう…」
「…その、オレはこういうことは慣れていないのだよ」
「う、うん」
「だから、何かしてほしいことがあれば言ってほしいのだよ」
緑間くんは優しい目でそう言ってくれる。
してほしいこと。何か、他に。
緑間くんと、したいこと。してほしいこと。
「…緑間くん」
「…ああ」
「キスがしたい、です」
「…!」
「あ…」
言った後で、ハッとする。
わ、私は今、何を。
「あの、その、ごめん!今のその、忘れて!」
顔を赤くして、せっかく繋いだ手もほどいて手をバタつかせると、緑間くんはその手を掴んだ。
「み、緑間くん」
「目を瞑るのだよ」
緑間くんの言葉に驚いて、すぐに目を閉じる。
こ、これで、本当に大丈夫だろうか。
心臓がドキドキ鳴ったまま目を瞑っていると、唇に優しい感触を感じた。
「…」
「は、はい」
「その、オレは女性がこういうことを言うのはあまりいいことではないと思っていたが」
「え、や、やっぱり…?」
「最後まで聞くのだよ」
半泣きになる私に落ち着くように促すと、緑間くんは小さい声で話し出す。
「そう思っていたが、から聞くのは、嬉しいと思ったのだよ」
緑間くんは大きな手で私の頬を撫でながらそう言った。
私の言葉を緑間くんが嬉しいと思ってくれたことが、私には何より嬉しくて。
「…緑間くんも、何かしてほしいことあったら、言ってね」
「…そうか。じゃあ」
緑間くんはもう一度私の右手を握りなおす。
「これからは、こうやって帰ろう」
そう言われて、私は大きく頷いた。
手を繋いで、キスをして
12.11.11
キシザキさんリクエストの緑間でした
緑間は以前から書きたかったんですがなかなかネタがなく…
でもリクエスト頂いたらいきなりネタが降ってきました
リクエストありがとうございました〜!
感想もらえるとやる気出ます!
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