「…ここにもいない」

「千歳が部活に来ないんやけど、知らんか?」と白石くんに言われ、千歳捜索に乗り出して早一時間。
校舎裏、校庭、教室…。
色んなところを探してるけど見つからない。
最後のあてとして屋上に来てみたけど、千歳の姿は見えない。
千歳と付き合い始めて半年経つけど、こうやって探して未だに見つけられたことがない。。
テニス部の人たちも探してるみたいだけど、ここは彼女なんだしせっかくだから一番に見つけたい。

「なんか、悔しいなあ…」

ため息をつきながら携帯の画面を見る。
『今どこにいるの?』と千歳にメールを送ったけど返信はない。
出ないことを覚悟しながら電話を掛けてみる。
だけど響いたのは、虚しいコール音だけだった。

「はあ…」

千歳はいつもそう。
メールも返したり返さなかったり、いつも電話に出たり出なかったり。
私、愛されてるんだろうか、とか思わずそんなことを考えてしまって悲しくなる。

いやいや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。
頭を振って考えをリセットさせる。
次はどこを探そう、だけどもう探してないところなんてどこにもない。
あ、やっぱり駄目だ。また悲しくなって、目がじんわり熱くなる。

『今どこにいるの?テニス部みんな探してるよ』

30分前に送ったメールの返信は来ないまま。
携帯を握りしめたまま目を閉じると頬を涙が伝うのがわかった。

こんなことで泣くなんて自分でも情けないけど、今まで我慢してたこととかが吹き出してしまった。
どうしよう、苦しいよ。

「どぎゃんしたとね?」

ふと、頭に重みを感じて、聞き覚えのある声が耳元をかすめた。

「ち、千歳!?」

振り返ると、千歳が私の頭の上に腕を乗せていた。

「あれ、、泣いとうと?」
「いやっ、これは、そう!目にゴミが!」
「?」
「…その、千歳、今までどこにいたの?」
「ん?まあそこらへんぶらぶらと」

そう言いながら座る千歳を見下ろしながら、目を掻くふりをして涙を拭った。

「またそうやって…。みんな探してたよ?」
「すまんすまん」
「メールも返してくれないし、電話も出てくれないし…」
「?メール?」
「…もしかして見てない?」
「すまんのう」
「…携帯はちゃんと携帯しても見なくちゃ意味ないでしょ」
「ははっ」

悪気もなく笑う千歳の横で、私は膝に顔を埋めた。
そしたら千歳の大きな手で私の頭をくしゃっと撫でた。

「携帯なんてなくても、寂しいときはいつでも傍にいてやるけん」

今みたいに、な。
千歳はそう言うと私の涙を拭った。








糸なし糸電話
11.01.31


「…部活、出なくていいの?」
「まあ、なんとかなるやろ」