冬は苦手だ。10年近く温かいロスで育ってきたせいなのか、とにかく寒い冬は好きじゃない。
秋田に来てよかったと思っているけれど、この冬の寒さだけは好きじゃない。
初雪のときはハイになったりもしたけれど、初雪から三ヶ月、もう毎日降っているからハイにもなれない。
窓の外を見れば雪が降り積もってる。今日も寒いんだろうなあ。
ため息をつきながら家を出た。

「寒い……」

一人なのに思わず呟いてしまうほど寒い。
寒いと言ったからと言って寒さがなくなるわけでもないのに呟いてしまうほど寒い。
とにかく寒い。何度言っても足りないほどに寒い。
マフラーに顔を埋めて身を縮こまらせる。
足を前に出すのも億劫だ。秋田に住んでいる人たちは小さなころからこんな寒さに耐えてきたのか? 信じられない。オレなら途中で凍え死んでる。

「辰也」

背中を丸めて震えていると、後ろから背中を叩かれた。
この声はだ。声が聞こえただけでオレの心は花が咲いたみたいに明るくなる。

、おはよう」
「おはよう、今日も寒いね……」

はピンクの手袋に白い息を吐く。
この気温じゃ息も凍りそうだ。

「凍え死にそうだ」
「もう、辰也ってば。でも、本当に寒いなあ……」

は腕を組むようにして自分の腕をさすりながら、オレの方へと体を寄せる。
ころんと頭をオレの胸のあたりに預けて、ちょっと小動物みたいだ。

はあったかいな」

の肩に手を回して抱き寄せる。
こうやって近くにいるとの体温が伝わってきて、温かい。

「冬っていいな」
「え? 寒いの嫌なんじゃなかったの?」
「寒いのは嫌だけど、がくっついてくれるから好きだな」

オレの言葉を聞いたはぽっと顔を赤くした後、口を尖らせた。

「…冬じゃなくてもくっつくよ?」

は恥ずかしそうに拗ねたように、小さな声で呟く。
あ、可愛い。はいつも可愛いけど、より一層。

「じゃあ、全部の季節が好きだな。だってがいつも隣にいるから」

ひんやりしたの額にキスをすると、少しばかりキスしたあたりが赤くなる。
もう一度同じ場所にキスしたら、今度は少し温かい。

冬も、春も夏も秋も、全部好きだな。




いつでも隣に
18.02.04





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