放課後、英語のノートを机に忘れたことに気づいて教室へ向かう。
今日は部活が終わるのが遅かったから、校内に人はまばらだ。
教室にも誰もいないだろうと思ったけど、ドアから明かりが漏れている。

「?」

誰だろう、と思い教室への足を早めると男子の声が聞こえてきた。

「…せやから……遠まわしに言うより…」
「あんま……言い過ぎても……」

この声はクラスメイトの白石と忍足だろう。
何を言ってるかよく聞こえないけど、この二人に遠慮する必要はない。
私は普通に教室へ入って行った。

「何話してんのー?」
「うわっ、!!」
「『うわ』とは何よ!」

忍足は椅子から落ちるような勢いで驚いた。
確かにいきなり話しかけたけど、そこまで驚かなくても…。

「なに?聞かれたくない話でもしてたの?」
「いや…その…」

忍足はもぞもぞと何か言い難そうにしている。
そんな忍足を見て白石は笑いながら言った。

「いやなあ、謙也が好きな子に告白するって言うからな、相談受けてたんや」
「なっ何言うてんねん!」
「ええやん、俺の意見だけやなくて女子の意見も聞いた方がええやろ」

「そういう問題やないやろ!」と忍足は小声で言う。
小声で言ってるけど全部聞こえてますよ。

「ほな、俺は用あるからもう帰るな!」
「ちょ、ちょい待て!」
、ちゃんと話聞いたってなー」

ほななー、と白石は明るく帰って行った。

「さて、じゃあ聞いてあげようじゃないの」
「いや…その…ちょっと告白しようと思っててん」
「へえ、頑張ってね」
「まあ、それでな。どうやって告白しようか白石に相談してたんや。
 …で、はどう思うん?」

忍足はちょっと赤くなった顔で言う。
でも真剣な目。ちゃんと真面目に答えてあげよう。

「とりあえずメールはなしやろ?」
「論外」
「ズバっと言うなあ…。まあ俺もメールで告白なんてする気あらへんけど」
「やっぱ直接じゃない?それか手紙」
「ラブレター?ちょっと古い気がするんやけど」
「古いからこそいいんじゃない?なかなかないからこそグッとくると言うか」

なるほど…と顎に手を当てながら忍足はうなずいた。

「…はラブレターがええんか?」
「いや、私は直接言ってもらいたいなあ。そっちのほうが男らしいじゃない」

…まあ、告白されたことなんてないんですけど。
でもやっぱり直接告白されるっていうのは乙女のロマンだ。

「よっしゃ!俺はやるで!」
「うん、頑張って」
「おう!!」

忍足は立ち上がると私を見つめる。

「どうしたの?」
「俺は言うで!頑張るで!」
「?」
!好きや!」



「ええええ!?」

予想外の展開に今度は私が椅子から落ちそうになる。

「な、何言ってんの!?」
「俺は本気やで!」

忍足の目はさっきより真剣だ。
それにこんなこと冗談で言うやつじゃない。そんなことわかってる。

「…いや、ホンマはわかってんねん。俺のこと好きやったらこないな相談受けへんって。
 でもここで言わんかったら男やない!」

確かに忍足の言う通りなんだけど、でもドキドキする。
このドキドキは告白されたからなのか、それとも違うものなのか。

わからないけど、とりあえず、今までで一番忍足のことをかっこいいと思ってしまった。











若葉
12.06.30