※プロポーズ企画(ああ、だから生きていける)とリンクしてます
結婚式というと洋風和風あるわけで、私たちの結婚式をどちらにするか今現在悩んでいる。 修造に聞いたところ「お前の好きなほうでいい」と一任されてしまった。 「うーん…」 修造は袴がとても似合いそうだから神前式もいいかなと思うけど、神前式はやっぱり堅苦しい。 洋風なら、ちゃんとした教会式をやるわけではないので、さらっとできるのだけど。 和洋どちらも捨てがたい。 「まだ悩んでんのか?」 「修造」 この間プランナーさんにもらったパンフレットを見ていると、修造がお茶を持ってきたくれた。 「うーん…」 「どこ悩んでんだ?場所?」 「いや、和洋どっちにするか」 「そこからかよ!?」 さすがにそんな手前のほうで躓いているとは思わなかったのだろう。 修造は驚きの声を上げた。 「なんで悩んでんだ?」 「うーん、修造袴似合いそうじゃない?だから神前式いいかなあと思ったんだけど、神前ってやらなきゃいけないこと多くて堅苦しいんだよね…」 「はあ?」 修造はまた驚きの声をあげる。さっきとは違って呆れが混じった声だ。 「オレのことかよ」 「?」 「普通、お前が着たいので悩むんじゃねえの。ドレスがいいか白無垢がいいかって」 「ああ。それ?だって私どっちも着たいし。だったら修造が似合いそうなほうがいいかなって」 私としてはウェディングドレスも白無垢もどっちも同じくらい着たい。 お色直しでどちらも着る人もいるみたいだけど、予算的にちょっと厳しい。 修造は「金のことは気にするな」と言ってくれているけど、さすがにそこまで甘えるわけにはいかない。 「…まあ、好きなほう選べよ。オレはどっちでもいーし」 「りょーかい!」 細かいところは一緒に決めるつもりだけど、大枠は私が決めるよう頼まれている。 私が決めないと、先にまったく進めない。 「……」 「…?どうしたの?」 パンフレットを凝視する私を修造がじっと見つめてくる。 なにか顔についてるのかと思い聞いてみる。 「…いや。本当もう悩んでねーみたいだな」 「?いや、そりゃあもう和洋どっちにするか悩んでるけど」 「そっちじゃねーよ」 今私が悩んでいるのを目の当たりにしておいて何を言ってるんだろう、と思ったら結婚式の話じゃないらしい。 じゃあ何の話だろう。修造は少し言いにくそうに口を開いた。 「…仕事」 「ああ」 なるほど。そっちのことか。 「もう大丈夫だよ」 以前はよく修造に仕事の愚痴を聞いてもらっていた。 人間関係にかなり疲れて、やめたいと何度思ったことか。 でも、もう大丈夫。 「いやー、苦手だった人が異動したからさ」 この間あった人事異動で悩んでいた人とは違う部署になった。 関わりがなくなったわけじゃないけど大嫌いな人とかそういうわけじゃなく、仕事をする上でうまく行かないというタイプの人だったので、距離が遠くなればずいぶん楽になった。 そのおかげで特に悩みなく仕事もやれている。 「まあ、ならいいけど」 「うん。…あっ、修造も愚痴とかあったら聞くからね?」 今思えば私ばかり修造に愚痴ってて、修造から悩みを聞いたことがない。 私がつらいつらいと言ってばかりだったから、もしかして修造は言いにくかったのかもしれない。 「別に平気」 「ほんと?仕事大変じゃない?」 「そーいうのは家庭に持ち込まない主義なんだよ」 修造は何でもない顔でそう言った。 持ってきたお茶を飲んで、少しだけ間をおいて、次の言葉を紡ぐ。 「…親父もそうだったし」 修造がぽつりと呟いたので、胸がきゅっとなった。 「仕事してたときも病気してたときも、弱音とか愚痴とか、全然言わなかったんだよな」 「…そりゃ、子供には言いにくいんじゃない?」 弱いところは自分の子供には見せにくいものだろう。 私だって、両親の弱音なんて聞いたことない。 「ほら、その点私は奥さんになるわけだし!対等な立場だし!」 胸を張ってそう言うと、修造はふっと笑みをこぼした。 「言いたくないならいいけど、言いたくなったらいつでもどうぞ!」 「別に平気」 「本当?」 「ああ。そのノーテンキな顔見てたら悩みとか吹っ飛ぶ」 修造はちょっとからかうような口調でそう言ってくる。 思わず両頬を手でおさえた・ 「!なんかムカつく!」 「ムカつくなって。いい意味だから」 「のうてんきっていい意味…?」 のうてんきってあまりいい意味では使われない気がする。 おそるおそる聞いてみると、修造は真剣な顔で言った。 「いい意味だよ。一緒にいると気が抜けるっつーか…悩みとか全部吹っ飛ぶし、楽になる」 「……」 「だからお前と結婚しようと思ったんだよ」 胸の奥が、甘く痛んだ。 プロポーズされたときと、同じだ。 「…えへへ」 「おう。喜んでろ」 「うん」 歓びの歌 15.05.19 感想もらえるとやる気出ます! |