「おっ、主将、今帰り?」

暑い夏の日。
練習を終えた後、校門を出ようとすると虹村に会った。

「わざわざ主将とか言うなよ」
「だってそうじゃない」

今日、3年生が引退し、虹村が主将になった。
3年が引退したのは寂しいけど、全中も優勝しての引退だし悲しさはない。

「つか、なんでお前が嬉しそうなんだよ」

虹村がクールな顔でそう突っ込む。

「だって嬉しいから」

虹村が主将になったこと。
それは虹村のことが認められたと言うことだ。

ただの部活の主将じゃない。
帝光中バスケ部の主将。
全国でも強豪の、今年は全中を制覇した部活の主将だ。

「変な奴」
「ふふ」

虹村が頑張ってきたことは知っている。
遅くまで自主練したり、後輩の面倒を見たり。

主将と言うのは強ければいいものではない。
責任感、リーダーシップ、そう言ったものが必要とされる。

それらが認められたんだ。
虹村のことが。

自分のことのように、嬉しい。

「ま、ほどほどに頑張るけどよ」
「うん、私もできる限りサポートしますので」

それがマネージャーの仕事だし、何より、虹村の力になりたいなと思う。
いつも頑張る、彼の力に。

「…別に平気だって。頼りになる後輩もいるしな」

虹村は言いながら、笑う。

「……」

なぜだろう。
確かに後輩たちは頼りになる、いいやつらだ。
だけど、虹村の言葉に素直に同意できない。

「…虹村」

さっきまでの弾んだ気持ちがしぼんでいく。
なんだか、苦しい。
ぎゅ、と虹村のシャツの袖を掴んだ。

「どうした?」
「…あの、本当に、私、頑張るよ」

そう言うと、虹村はおかしそうに笑った。

「なんでお前が頑張るんだよ。頑張るのオレだろ」
「そうだけど、なんだろ…」
「?」
「…たまには、頼ってくれていいよ。頼りないマネージャーかもしれないけど」

なんとなく、虹村の笑った顔が寂しげで。
この人を放っておけないような気がした。

「わっ!」
「何言ってんだよ」

虹村は私の頭を力強く撫でる。

「頼りにしてるぜ、マネージャー」
「…うん」

頭の上にある虹村の手をどかそうと、手を伸ばしてその手に触れる。
虹村は私の手を掴んだ。

「に、虹村」
「…なんだよ」
「…なんでもない」


虹村の手を握り返す。
私たちはそのまま歩き出した。

なんだか、胸の奥が痛かった。








空を見上げて君を想う

13.12.10

何度も言いますけどヒロインにだけ弱いところ見せる話がすごく好きです
虹村先輩は強い人だけど、誰か支えになる人がいてくれたらなあと思います

監督が倒れた時の虹村先輩のことを思うと胸が痛いです


各タイトル配布元はcapriccio
「真っ赤な空を見ただろうか」はバンプの曲です
人の荷物を持つことはできないけど、支えになることはできると思うのです



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