4月の終わり、秋田の桜の咲く頃。 辰也と二人、桜で有名な公園に来ていた。 「いい天気だねー」 「ああ。お花見日和だ」 適当なところにレジャーシートを敷いて、二人で座った。 「お弁当作ってきたよ」 「わ、ありがとう」 朝早く起きて二人分のお弁当を作ってきた。 おにぎりと、から揚げと、卵焼きと…お花見ならこれだろうというものを揃えたつもりだ。 「おいしい!」 「ふふ、ありがとう。お茶もあるから」 辰也は笑顔で食べてくれる。 いつもそうやっておいしいと言ってくれるから、私は何度でも作りたくなる。 * 「お腹いっぱい」 「ね」 辰也は丁寧にお弁当箱を片付けると、目を細めた。 「…いいな」 「?」 「天気はよくて、桜が綺麗、ご飯もおいしい、それに何より、隣にがいる」 辰也は私の頬を撫でる。 甘いにおいがした。 「幸せだなって、思うよ」 「…うん」 ぎゅっと目を瞑る。 私も、幸せだな。 「辰也、あの」 「ん?」 「膝枕とか、する?」 崩した足を座りなおして、辰也に聞いてみる。 「いいの?外なのに」 「う…みんなしてるし」 いつもは無断でくっついてくるくせに、こういうときばっかり聞き返してくる。 そこかしこでカップルだったり夫婦だったりが膝枕してるし、別に…。 「じゃ、遠慮なく」 辰也はごろんと寝転がって、私の膝に頭を乗せる。 私を真っ直ぐ見つめると、柔らかく笑った。 「…本当に」 「ん?」 「…幸せだな」 辰也は私の手を握る。 あいている手で辰也の前髪を梳いた。 「部活も好調だし」 「うん」 新学期に入って約一か月。 男子部員もたくさん入ったし、女子マネージャーも二人ほど入ってくれた。 大分仕事も覚えてくれたから、私も少し余裕ができた。 「」 「わっ」 辰也はぎゅっと私のお腹のあたりを抱きしめる。 少しだけ見える辰也の表情は、まるで子供みたいだ。 「辰也ってば」 「んー…」 「寝る?眠い?」 「ちょっとだけ」 「あったかいもんね。起こすから大丈夫だよ」 「うん」 辰也は目を瞑る。 いつも思うけど、大人っぽい表情なのに寝顔は年相応どころか、少し幼いぐらいだ。 辰也の寝顔を知っている人はきっと少ないんだろうなと思うと、とても嬉しくなる。 「あ」 桜の花びらが辰也の頬に落ちる。 …写真、撮っちゃおうかな。 ← top → 14.12.19 |