「あ、これWC決まった時の?」 部活の後、オレの部屋にを呼んだ。 が机の上に写真が何枚か散らばっている写真を見てそう言ってくる。 「そうだよ」 「わ、岡村先輩、嬉しそう」 「こっちにもあるよ」 そう言って自分の携帯を取り出す。 そこにもたくさん写真が入っている。 「あ、敦だ。お菓子食べてる」 「見ていいよ」 に携帯を渡す。 は携帯の画面を弄って、次々に写真を見ていく。 「ふふ、懐かしい」 「そうだね」 「…あ!」 は一枚の写真を見て、顔を一気に真っ赤にする。 「ば、バカ!なにこれ!」 「の寝顔」 「…っ!」 は「バカ!」と言いながらオレを叩く。 予想通りの反応だ。 がオレの隣で眠っていたとき、可愛いから、ついね。 「可愛いだろ?」 「バカ!消して!」 「嫌だよ」 「ダメったらダメ!」 「オレしか見ないんだし」 そう言っての手から携帯を取る。 は真っ赤な顔を両手を覆う。 「消して!今すぐ!」 「可愛いのに…だってオレの写真持ってるだろ?」 「そ、それは、普通の写真だよ!」 「オレだって普通の写真だよ」 「これは普通じゃないよ!」 「そうかなあ」 の手が届かないところまで携帯を持ち上げて、まじまじ見つめる。 こんなに可愛いのに、消すなんてもったいないことできるはずがない。 「ちゃんとロック掛けるし、誰にも見せないよ」 「…ほ、本当?」 「誰かに見せるなんて、もったいないことするわけないだろ」 「…な、なら…わかった」 はしぶしぶそう言う。 誰かに見せるはずがない。 のこんな顔、他の奴に見せるわけがない。 「寝顔見られるの、そんなに恥ずかしい?」 「恥ずかしいよ…女の子ならいいけど、男の子に見られるの」 は俯いて、恥ずかしそうに話す。 「オレはいいの?」 「それは…まあ、恥ずかしいけど…」 「そっか」 嬉しくなって、の額にキスをする。 オレだけが知っている、だ。 「可愛い顔」 「も、もうその話はいいから…」 「寝顔もだけど、今の表情もだよ」 キスした後の、少し照れて、でも嬉しそうな顔。 世界で一番、可愛い顔だ。 「他の誰にも、見せちゃダメだよ」 「…見せないよ」 今度はからキスをする。 また、可愛い顔。 「…私のこんな顔はね、世界中で、辰也しか知らないんだよ」 は優しい顔で笑う。 思わずを強く抱きしめた。 「好きだよ」 「私も」 のこんなに可愛い顔は、オレしか知らない。 すごく嬉しいよ。オレだけのだ。 「」 ああ、ダメだな。 どんどん欲が深くなってくる。 「辰也」 がもっと欲しいよ。 の全部が。 オレしか知らないがいるってわかっても、まだ足りない。 オレが知らない、ほかの奴だけが知っているがきっといる。 それはどうしようもないことだとわかっているけど、わかっていても納得できない。 オレの知らないがいるということが、どうしようもなく、怖い。 top → 13.10.25 |