部活が終わったあと、今日は早めに帰った。 向かう先は、友達の家。 今日は、久しぶりのお泊まり会だ。 「こうやって泊まるの久々だね」 「ねー。二年になってからは初めてじゃない?」 友達の花梨と望美。 今日は花梨の家でお泊り会だ。 「に彼氏できちゃったからねー」 「え」 望美にそう言われて固まる。 え…。 「もー氷室くんとばっかりなんだもん!」 「ご、ごめん」 「だーめ。今日はたくさん事情聴取してやるんだから」 そう言って二人は笑う。 こ、これはまずい。 「いつも氷室くんとどこ行ってるの?やっぱモール?」 「うーん…あんまり出掛けないから」 「そうなの?」 「ほとんど毎日部活だし…辰也の部屋にいることが多いかなあ」 とにかく毎日部活部活の日々。 部活が終わってからじゃ大したとこにいけないし、バイトも忙しくて出来ないからあまりお金もない。 どこかに行くより、辰也の部屋にいることが多い。 「部屋で何してるの?」 「え?」 「?」 「あ、えっと…DVD見たり、勉強したりとか」 「…本当に?」 「え?」 「本当にそれだけ?」 望美はずいっと詰め寄ってくる。 そ、それだけって…。 「氷室くん帰国子女でしょ?」 「うん」 「…で?」 「……」 沈黙を貫く。 だ、だって…。 「あーもう!つまりどこまで行ったかってことよ!」 「い、いやそれは」 「全然そういう話しないもんね」 二人にはそういう話はしていない。 二人には、というより、誰にもしていない。 なんだか恥ずかしくて…。 「当然キスはしてるでしょ」 「…」 「返事!」 「も、黙秘権」 「あんたに黙秘権はない!」 「私氷室くんとがキスしてるの見たことあるよ」 「「えっ!?」」 花梨が冷静な口調で言う。 い、いつの間に…! 「先月かなあ、私も部活遅くなって一人で帰ってたら二人が道端でキスしてた」 「う…」 だ、だから外ではダメだってあれたけ言ったのに…! 「じゃあ次の質問ね」 「まだあるの?!」 「当然!ちょっとこっち来て」 望美は気合いの入った声でそう言った後、私と花梨を手招きで呼ぶ。 三人で小さく丸まると、望美は小さな声で言った。 「…で、結局最後まで行ったの?」 その言葉で私の顔はボッと真っ赤になった。 「い、言えない!」 「言いなさい!」 「そ、それだけは本当無理…!も、黙秘権!!」 「…言えないってことは、もうしてるってこと?」 私と望美が叫ぶ中、花梨が冷静な声で言ってきた言葉に、私の頭は爆発した。 「ち、違う!違うから!!」 「本当に?」 「ほ、本当」 「本当の本当に?」 「う…」 詰め寄られて答えられなくなる。 だって、本当は。 「は嘘吐けないねー」 「うう…」 「もー何よー、言わないなんて水くさい!」 「ご、ごめん…」 「で、いつ?」 え、ええ!?まだ事情聴取続くの?! 「やっぱ記念日系?クリスマスとか?」 「クリスマスはバスケ部全国大会でしょ」 「あ、そっか。まさかの大晦日?なんか縁起いいね」 二人は好き勝手話してる。 なんだろう…すごく恥ずかしい…。 「あ、あの、二人とも」 「ほーら、早く白状しないとまだまだ続くわよ?」 「…」 本当、この二人は…。 二人揃ってしまえば私一人じゃ敵わない。 もう降参だ。 二人を手招きして、さっきみたいに丸まった。 「あ、あのね」 「うん」 「…た、辰也の誕生日」 「え」 「だ、だから!辰也の誕生日!」 必死にそう言って、両手で顔を覆った。 は、恥ずかしい…! 「…氷室くんの誕生日って…」 「10月だよね。誕生日プレゼント買うって言ってたの中間前だし」 二人はお互いを見合う。 そして、二人一気に私にのし掛かってきた。 「わっ!?」 「そんな前なの?!」 「ちゃんと報告しなさいよー!」 「ご、ごめん!ごめんってば!」 「ダメ!許さない!」 望美はそう言うと、机に置いてあった私の携帯を取って私に差し出す。 「氷室くんに電話!」 「え?」 「いいから!」 望美の迫力に、言われるまま辰也に電話する。 でもこの状況で何を話せばいいんだろう…。 『もしもし、?』 「あ、辰也」 『どうしたの?今日春日たちと遊ぶって言ってたけど』 「あ、うん…あっ!」 辰也と話していると、望美が電話を取り上げる。 スピーカー状態にすると、望美が辰也と話し出した。 「もしもし氷室くん?春日だけど」 『ああ、こんばんは』 「こんばんはー。のことなんだけどね」 望美がそう言うので、何を言うんだと思って慌てて声を出そうとする。 だけど、花梨が私の口を塞いでそれを阻止した。 『?』 「のことキズモノにしたんだから、ちゃんと責任取ってのこと幸せにしてよね!」 望美の言葉に、胸が締め付けられた。 『もちろん。でも』 「?」 『責任とかなくても、幸せにするよ。単純に、オレがの幸せそうな顔が好きなんだ』 辰也の言葉に、望美も花梨も笑う。 みんな…。 「ならいいの!不幸にしたら殴りに行くから!」 『それは怖い』 「あはは。また学校でねー」 『ああ。じゃあまた』 そう言って望美は電話を切った。 私は思わず望美に抱きついた。 「わっ!」 「もー!」 言い方はあんなだけど、嬉しい。 大切な友達が、私の幸せを願ってくれる。 大好きで、大切な友達。 「ありがと」 「なにが?」 「ふふ」 望美は私の頭をぽんぽんと撫でる。 「…で、もう一個聞きたいんだけど」 「ま、まだあるの!?」 「もう一個だけ!」 望美はまた私と花梨を呼んで小さく円の形にさせる。 「…どうだった?」 「?なにが?」 「だから、初めて」 「……」 はじめて。 はじめて…。 「えっ!?」 初めてって、初めてってあれのこと!? 「え、えええ!?」 「別に変な意味じゃなくて!純粋に聞きたいの!」 望美は真剣な顔で聞いてくる。 う…。 「あの、ね」 「うん」 「…し」 「し?」 「幸せだった…」 小さい声で呟く。 うん、そう。その。 あのとき、確かに、幸せだった。 「もーー!!」 「きゃっ!?」 「氷室くんムカつく!殴りたい!」 「ええっ!?」 望美は私に抱き着いて叫ぶ。 な、殴りたいって…! 「あー、もう。氷室くんムカつく〜」 「そ、そんなに?」 「なんか私たちのが取られちゃった感じ」 「それわかるー」 二人は向かい合ってそう話す。 と、取られた? 「べ、別にとられてないよ」 「本当に〜?」 「本当に!」 辰也はとても大切で大好きな人だけど、二人だって私にとって大切で大好きな人だ。 「ていうかさ、二人とも質問してばっかりだけど、二人にはなにかないの?」 「えっ!?」 私がそう言うと、望美がずいぶんと慌てた顔をする。 「なに、望美何かあるの!?」 「な、ないない。別にない!」 「あやしー」 「ねー」 花梨と顔を見合わせて、頷く。 よし、次は望美の番だ! 「事情聴取!」 「も、黙秘権!」 「許しません!」 「だ、だって花梨は!?」 「何もネタのない私に対する嫌がらせかな?」 「ごめんなさい!」 花梨と一緒に望美を囲む。 今日は寝ないで女子トークだ! ← top → 14.04.11 |