辰也は、とってもかっこいい。


「じゃあ氷室、次の文読んでくれ」
「はい」

英語の授業中、辰也が英文を朗読し始める。
帰国子女と言うことで、辰也は英語の授業ではしょっちゅう当てられてる。
綺麗な声、綺麗な発音。
ずっと聞いていたくなる。

「…よし、いいぞ」

朗読が終わってしまう。残念だ。
授業中、後ろのほうの席の辰也の姿を見ることはできないから、辰也が教科書を読んでいるときだけ違和感なく彼を見ることができるのに。
先生も、もうちょっと長く読ませてくれればいいのに。





「いただきまーす」

お昼休み、友達と机をくっつけてお弁当を食べる。
辰也は教室の後ろの方で、部活の友達と購買で買ったパンを食べているみたいだ。
辰也は見た目とは裏腹に大食いだ。
まあ、成長期だし、バスケ部は練習量もすごいし当たり前といえば当たり前かもしれないけど。

「氷室のパンって新商品?」
「ああ。微妙」
「ははっ買わなくてよかったー」

そんな会話が聞こえてくる。
辰也は上品そうに見えて結構豪快だ。
大きく口を開けてご飯を食べる姿は、なんていうんだろう、その。
野性的?みたいな、その。
とにかく、ドキドキする。





「よし、もう一本行くぞ!」

部活中、辰也がシュートを打つ。
綺麗に決まった。

「……」

ドリンクも補充済み。洗濯も今日はなし。
買い出しも昨日行ったばかり。
今はあまりない空き時間。

辰也をじっと見つめても、大丈夫な時間。
嬉しいな。
辰也はとってもフォームが綺麗だ。
シュートも、ドリブルも、パスも。
全部、お手本のようなフォームで、見惚れてしまう。
辰也は、かっこいい。

「氷室先輩かっこいいね」
「ねー!」

体育館の入り口で一年生がきゃっきゃと言い合う姿が見える。
そう、辰也はかっこいい。
顔も整っているし、背も高くて、妙な色気というかフェロモンいとうか、そういうものまで醸し出してる。

かっこいい。
辰也はかっこいい。

「……」

ちょっとだけ不機嫌になる。
…辰也のかっこいいところなんて、私だけが知っていればいいのに。

なんて、思っても仕方ないけど。





「はい、ココア」
「ありがとう」

放課後、辰也の部屋。
辰也はいつも温かいココアをくれる。
辰也が飲んでいるのはコーヒーだ。

「……」

辰也はマグカップを口に近付ける。
唇が、色っぽい。


「ん?」
「今日、ずっとオレのこと見てたね」

そう言われてポッと顔が赤くなる。
ば、バレてた…!

「ち、違う」
「見てたよね」
「…違うってば!」
「授業中も、昼休みも、部活中も」
「…っ」

顔がより赤くなる。
うう…。

「ち、違うの」
「まだ言うの?」
「…今日だけじゃないの!」

そう、今日だけじゃない。

「み、見てるのはいつもだよ」

見てるのは、いつものこと。
いつも、毎日だよ。

「わっ!」

辰也は私をぎゅっと抱きしめる。

「そっか」
「う、うん…」
「オレも毎日見てるよ」
「…辰也」
が可愛いから、ついつい見ちゃうんだ」
「…私も」

辰也もぎゅっと抱きしめる。
私もだよ。

「私もね、辰也がかっこいいから、いっぱい見ちゃうんだよ」







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14.04.25