息を吐けば真っ白になる。 10月だけど、もう冬と言っていい感じだ。 「寒い?」 「ん、ちょっと」 「もっとこっちおいで」 辰也の家からの帰り道。 辰也に送ってもらっているところだ。 上着は着ているけど、少し寒い。 辰也と身を寄せ合う。 歩きにくいけど、暖かい。 「…」 「どうしたの?」 「ふふ」 辰也の首には、私のあげたマフラーが巻かれている。 自然と顔が綻んでしまう。 「秋田って寒いよね。凍え死にそうだ」 「ロスって暖かいんだっけ?」 「うん…10月でこれじゃ、1月とかになったらまずいな」 辰也は眉を下げてそう言った。 そっか…ずっとここにいる私でも寒いんだから、辰也はもっと寒く感じるんだろう。 クリスマスプレゼントは、また暖かいものにしようかな。 「、また笑ってる」 「え?」 「幸せそうだね」 「…辰也こそ」 「うん」 今は、なんでもないことがとても幸せに思える。 辰也が前よりずっと傍にいるような気がして、ドキドキして、幸せで。 「最高の誕生日だよ。素敵なプレゼントを2つももらえた」 「2つ?」 「うん、マフラーと」 辰也は私にキスをした。 「…っ」 「最高のプレゼントだ」 顔が赤くなる。 赤くなるけど、それを抑えて、辰也に気持ちを伝えた。 「あ、あのね」 「?」 「プレゼントは、マフラーだけで…さっきの、あれはね」 辰也の方を向いて、繋いでいない方の手で辰也の服の裾を掴んだ。 違う、そうじゃないんだよ。 「プレゼントとか、そういうつもりじゃなくて…」 「?」 「…私もしたかったの!それだけ!」 自分で言って顔が真っ赤になるのを感じた。 でも、そうだから。 辰也がしたがってるから、とか、そういうつもりじゃなくて、私は、 「」 辰也は私の髪を優しく撫でると、私を抱きしめる。 「そっか、うん…そうだよね」 「うん」 「…うん」 「…?」 辰也はボーっとした返事を繰り返す。 だ、大丈夫かな。 「…どうしたの?」 「…いや…」 「?」 「嬉しすぎて、頭が割れそうだ」 辰也が真剣な顔でそう言うので、思わず笑ってしまった。 「ひどいな、本気なんだけど」 「ふふ」 「はオレを喜ばせるのがうまいね」 「辰也だって」 「……」 「?」 「…名前で呼んでくれたのも、呼びたかったから?」 辰也は優しい声でそう聞いてくる。 私は笑って頷いた。 「全部、そうだよ。辰也のことが好きだから…名前で呼びたくて、もっと、触りたくなって」 「うん」 辰也はもう一度キスをする。 辰也に触れるたびに、幸せだと実感する。 家に帰りたくない、な。 「もう着いちゃったね」 「…うん」 私と辰也の家は近い。 気軽に行き来できるのは嬉しいけど、送ってもらうとき、すぐに着いてしまうのが寂しい。 「…離れがたいな」 「うん…」 もっと、もっと一緒にいたい。 離れたくない。 ずっと、一緒にいたいのに。 「…」 「辰也、あのね」 「うん」 「さっきも言ったけど、毎年辰也の誕生日、お祝いするよ」 「うん」 「辰也がおじいちゃんになっても、ずっとだよ」 「うん」 辰也は私を抱きしめる。 暖かい。 「、ずっとだよ」 「うん」 「ずっと一緒にいよう」 「うん」 ずっと一緒。 ただの口約束が、こんなにも嬉しい。 「」 「…うん」 「ダメだね、一緒にいると、ますます離れられなくなる」 そう言うと辰也は少し体を離す。 引き留めたいけど、もうこんな時間。 寂しいけど、仕方ない。 また明日、会えるんだから。 「また、明日ね」 「うん」 辰也は私に一度キスをして、私をじっと見つめる。 背伸びをして、今度は私からキスをした。 「おやすみ」 「…おやすみなさい」 今まで何度もしてきたキス。 何度も、何度も、たくさん。 そのはずなのに。 初めてのキスみたいにドキドキして、 今までで一番、甘くて、幸せなキスだった。 ← 13.07.05 押してもらえるとやる気出ます! |