WCも終わり、私たちは秋田に帰ってきた。

そう、WCが終わった。
先輩たちが、引退する。

「先輩…」

考えてみれば、7月から半年。
たった半年だった。
だけど、寂しくて、寂しくて、仕方ない。

ちん、泣きそう〜」
「だって…」
「お前ら、しっかりやれよ」

そう言って岡村先輩が私の頭を撫でるから、堪えていた涙が溢れた。

「あーあ、泣かせた。氷室に殺されんじゃねー?」
「うおおおっ!?」
「岡村さん…」

辰也が無表情で岡村先輩に近付く。
思わず辰也の服の袖を引っ張る。

「た、辰也」
「冗談だよ」

辰也は寂しげに笑う。

「オレだって、寂しいんですから」

辰也は眉を下げる。
…本当に、最後なんだ。
今日でいなくなる。先輩たちは、引退してしまう。

「頑張れよ、お前たちなら大丈夫だ」

思えばたった半年。
半年前、夏休み。私の世界は変わった。

先輩たちが、いなくなってしまう。
寂しくて、寂しくて、涙が止まらない。





先輩たちのいなくなった、少し寂しい部活を終えた後、
辰也と二人部室で部誌を書いていた。

もう明日からは年末年始で部活も休み。
慌ただしいな。

、目が真っ赤だ」

辰也が私の目の下をなぞる。

「…だって」
「そんなに寂しい?」」
「寂しいよ…辰也だって、同じでしょ?」
「うん」

辰也は最後にみんなで撮った写真を眺めながら話す。

「…部活っていいものだね」
「…うん」
「WCでアツシもすっきりしたみたいだし、よかった」
「……」

辰也の言葉を聞いて、辰也の手を握る。

「…辰也は?」
「え?」
「よかった?」

不安になりながら、辰也にそう聞く。
辰也は、どう思っているんだろう。

「…よかったよ」

辰也は少し寂しげな表情。
私に少し寄りかかってくる。

「…すっきりしたし、タイガとも…」
「…そっか」
「うん。…少し、聞いてくれる?」

辰也は真剣な顔だ。
私は黙って頷いた。

「…WCの前に『自慢の恋人』って言ってくれてだろ」
「…うん」
「嬉しかったよ、本当に」

辰也は私をまっすぐ見る。
少し、ドキドキする。

「…いつもオレを支えてくれて、柔らかく笑って包んでくれて、を好きになってよかった」
「…辰也」
「…いや、そんなだから、好きになったのかな。が好きだよ。を好きになって、好きになってもらえて、幸せだ」
「…私も」

辰也の手を握る。
あたたかい。

「私も辰也のこと好きになってよかった。辰也に好きになってもらえてよかったよ」

「…辰也を好きになるまで、自分がこんなだなんて思わなかったの」
「こんな?」
「…こんなに誰かを強く想うなんて、思わなかったの」

自分がこんなに誰かを強く思うなんて思わなかった。
思いが強すぎて、苦しくなるぐらいに。

「誰かのためにがんばりたいとか、支えになりたいとか、今まで意識したことなくて…辰也を好きになって、いろんなことを考えるようになったよ」
…」

辰也は私の方を抱き寄せる。
じんわりと、心の奥に幸せが広がっていく。

「…また、支えてもらうかもしれない」
「うん」
「寄りかかってばかりでごめん」
「そんなことないよ。私だって辰也に甘えてばっかりだし」
「もっと甘えてもいいよ?」
「ふふ、ほら」
「?」
「私も一緒だよ。もっと寄りかかっていいんだよ」

そう言うと、辰也は笑う。
穏やかな時間だなあ、と思う。

穏やかで、優しい時間。

「…、少し早いけど、今年はありがとう」
「うん、私もありがとう」
に会って半年しか経ってないなんて、なんだか信じられないけど」
「ふふ。来年は、一年間ずっと一緒だね」
「そうだね。その次も」
「うん」


こんな時間が、ずっと続けばいいなと思う。

辰也に会えてよかった。バスケ部に入ってよかった。
初めての気持ちを、たくさん教えてくれてありがとう。

これからも、よろしくね。









14.01.31