※大学生設定です 今日は辰也と一緒に大江戸温泉に来ている。 更衣室で一旦別れて、浴衣に着替えて入り口で待ち合わせだ。 「辰也!」 更衣室を出ると、辰也はすでに着替え終えて入り口のところで待っていた。 「ごめん、待たせちゃって」 「ううん、大丈夫だよ。、浴衣可愛いね」 辰也は流れるようにそう言ってくれる。 浴衣はここのものだけど、褒められると嬉しい。 「ありがと。辰也もかっこいいよ!」 「ありがとう。うまく着れてる?」 辰也は裾を上げて自分の浴衣をまじまじ見る。 受付で「浴衣は自分で着ないといけない」と言われたとき辰也は不安がっていたけど、問題なく着れている。 「大丈夫だよ」 「よかった」 「あ、辰也携帯持つよ」 辰也は手に携帯だけ持っている。 後精算だからお財布は必要ないし、携帯以外の荷物はロッカーに入れてきたんだろう。 私は携帯以外にもポーチとかも巾着に入れて持ってきたし、辰也の携帯も入れられる。 「ありがとう。さすが、準備いいね」 「ん」 辰也の携帯を巾着に入れて、手をつないだ。 「すごいね。温泉って聞いてたけど縁日みたいだ」 辰也は施設の中を見回しながら言う。 温泉施設というけど、施設の中は屋台のような食べ物屋やゲーム露店があって、お祭りのような雰囲気だ。 「とりあえずご飯食べようか。お風呂はその後?」 「うん。お風呂って言っても足湯だけど…」 混浴がないから全身浸かるお風呂には一緒には入れない。 まあ、混浴があっても私は嫌だし辰也も絶対入らせないとは思うけど…。 そんなわけで、お風呂は一緒に足湯に入る予定だ。 足湯ならお腹を膨らせた後にゆっくり入っても問題なさそうだし。 「ご飯食べるとこもいっぱいあるね。とりあえず回ってみよ」 「うん」 ざっと見ただけでもラーメン屋にクレープ、甘味処、居酒屋、高級そうな和食店まである。 食べるものには困らなさそうだ。 お店がたくさん立ち並んでいて、至る所にテーブルと机が用意されている。 私と辰也が同じお店のものじゃなくても、そこに持ち寄れば一緒に食べられる仕組みのようだ。 私も辰也も食べたいものを決めて、それぞれお店で買ってきた。 せっかくなのでテーブル席じゃなくお座敷に座ることにした。 辰也が持っているのは、カツカレーと焼きトウモロコシ。 「いっぱい食べるよね、辰也」 「そう?」 辰也は涼しげな見た目に反してよく食べる。 身長が高いし運動もしてるから当然と言えば当然だけど、初めて見たときはびっくりしてしまったのをよく覚えている。 たくさん食べている辰也は、なんかいいなあって思う。見ていて幸せなのだ。 「はラーメンにしたんだ」 「うん。うどんと迷ったけど…こういう雰囲気だとラーメン食べたくなるんだよね」 うどんもなかなかおいしそうだったけど、このお祭りのような浮いた雰囲気ではラーメンが食べたくなった。 辰也の隣に座って、手を合わせた。 「いただきます」 「いただきます」 そう言って箸を割る。 ラーメンは味が濃くてなかなかいい感じだ。 「おいしい?」 「うん。少し食べる?」 そう聞くと、辰也は少し掬って私のほうに差し出す。 そのカレーを口に含むと、程よい辛さが口に広がる。 「おいしいね!」 「うん。ボリュームもあるしいい感じだ」 そう言って辰也は口を大きく開けてもう一口食べる。 辰也はよく食べる上に食べるのも速い。 あまり速く食べ過ぎるのはよくないと何度か注意してからは少し遅くなったけど、それより私よりずっと速い。 「、慌てなくていいから」 「うん」 辰也が先に食べ終えてしまうと、今度は私が慌ててしまうけど、いつも辰也は優しくそう言ってくれる。 でもラーメンは早く食べないと伸びてしまう。 少しだけ急ぎつつ箸を進めた。 「ふー…ごちそうさま!」 「ごちそうさまでした」 私もご飯を食べ終えて、手を畳について少し楽な姿勢を取る。 隣で辰也はお腹をさすっている。 「まだ入るな…」 「えっ」 お腹いっぱいなのかと思いきや、まだ食べる気なんだ…。 男の人って本当にすごい。 「あ、でも私も甘いものなら食べたい!」 辰也のことをよく食べるな、なんて思ったけど私も甘いものならまだ入るしぜひ食べたい。 かき氷にクレープ、あんみつなど甘いものはたくさんあったはずだ。 「はは。じゃ、また何か食べようか」 「うん!」 辰也は食器をまとめると私の分も持ってくれる。 辰也はいつも、こうやってスマートに優しく接してくれる。 「ありがと」 「いいえ」 後編→ |