※岡村の春よ来い(岡村がすごく可愛らしい同級生を好きになって、氷室と福井に恋愛相談をする話)とリンクした話
※というよりそっちを読んでいないとところどころわかりにくかもしれません


「あ、岡村くん」
「おおっ!?」
「ふふ、今帰り?」
「お、おお…」
「そうなんだ。私も委員会で遅くなっちゃって」
「そ、そうか、その…」
「?」
「その、一緒に、か、か、帰らんか。え、えっと、ほらワシでかいし、一緒にいれば変な奴寄ってこんだろうし」
「うん、ありがとう」

部活が終わり、辰也が着替えるのを待っているとき。
岡村先輩と、可愛らしい三年生が一緒に帰るのを見た。



「ねえ、辰也!さっきね!」
「どうしたの?」
「岡村先輩がね、すっごく可愛い人と一緒に帰ってたの!」

辰也は少し驚いた顔をする。

「あの人、彼女なのかなあ。岡村先輩、いつもモテないとか言ってるけど、あんなに可愛い人がいるんだね」

岡村先輩は折に触れて「モテたい」「彼女がほしい」と言っていたけど、あんなに素敵な人がいるんじゃないか。

「彼女じゃないんじゃないかな」
「?そうなの?」
「まだね」

辰也の一言に、私の心はさらにヒートアップする。
まだ、ということはいつ付き合ってもおかしくない、とか、そんな感じ!?

「わあ、いいなあ」
「女の子はこういう話が好きだね」
「うん!」

恋バナは乙女のエナジーだ。
それもいつもお世話になってる先輩となれば、なおさら。

「ていうか、辰也詳しいね?岡村先輩から何か聞いてたの?」
「少しね」

ああ、なるほど。
男子でもそういう話する人はするんだなあ。

「うまくいくといいね」
「うん」

いつも「彼女がほしい」と嘆いていた岡村先輩。
けど今は、「彼女が欲しい」のではなく、「あの子と付き合いたい」と思っているんだろう。
彼女と一緒に帰る岡村先輩の表情が、そう物語っていた。

「…た、辰也?」
「ん?」

岡村先輩と彼女のことを考えていたら、いつの間にか辰也が私をじっと見つめているのに気付く。
辰也はよく私を見るけど、いつも以上だ。

「ど、どうしたの?」
と岡村先輩の彼女、似てるなって」
「え!?」

に、似てる!?どこが!?

「ぜ、全然似てないよ!」
「そう?」

岡村先輩の隣に並んでいた人は、とても可愛い人だった。
私なんか比べものにならないぐらい。
そこまで卑下するほどの見た目ではないだろうけど、さすがにあそこまで可愛くない…!

「そうだね、の方が可愛いね」
「い、いやそうじゃなくて」
「ん?」
「……」

辰也はまっすぐな目で私を見る。
…本当にそう思ってくれているんだなと感じる。

「あ、ありがとう…」
「ふふ」

私が辰也を世界で一番素敵な人だと思うように、辰也もそう思ってくれているんだろう。
…恥ずかしくてくすぐったいけど、嬉しい。

「でも、あ、あんまり他の人にはそういうの言っちゃダメだからね」
「どうして?」
「だってそう思ってくれるのは多分辰也だけで…他の人に言ったら笑われるレベルだと思うよ…」

岡村先輩の彼女は本当にテレビに出てるタレントにだって負けないぐらい可愛らしい人だ。
そんな人と比べて私の方が可愛いと言われたら…なんかもう…。

「そんなことないよ。は世界で一番可愛いくらいだ」
「だ、だからそれはね、惚れた欲目ってやつで」
「そう?」
「そ、そうだよ、それに」
「?」
「…私は、そっちのほうが嬉しいし…」

世界中の人が認めるような可愛さより、私は。
辰也が、私の好きな人が、…その、私を好きだって言う思いで、私を可愛いと思ってくれることの方が、ずっとずっと嬉しい。


「わっ!?」
「やっぱりが世界一可愛いよ」
「…っ」

辰也は私の頬を優しく撫でる。
…うん。
辰也に可愛いと言ってもらえるのは、ちょっと恥ずかしいけど、嬉しい。

「でもやっぱり、似てると思うな。雰囲気とかさ」
「そ、そう?」
「うん」

まあ、確かに、あの人はなんとなくおとなしそうな感じ。
私も活発な方ではないし、そういう意味では似てるのかな…。

「…」
「?辰也?」
「…似てるよ」

その言葉にドキッとする。
…なんとなく、不安になる。

辰也の服の袖をぎゅっと掴んだ。

?」
「…」
「どうしたの?」
「…あの」
「?」
「…あの人のこと、好きになっちゃ、嫌だよ」

彼女と私、本当に雰囲気とか性格が似ているとして、客観的に可愛いのは断然彼女だ。
そう思うと、なんか、すごく不安に…。



こういうヤキモチっぽいことを言うと、辰也は場所をわきまえずだいたい抱きついてくる。
だからそれに備えて身構えていたら、辰也に両手を捕まれた。

「は、はい」
「家に行こう」
「えっ!?」
が誘ってきたんだよ」
「あ、いや、別にそういう意味じゃ」
「さっきから可愛いことばっかり言って」
「だからそう意味じゃ…」
「ここでしたほうがいい?」
「家!家行きましょう!」
「うん」

辰也は満面の笑みでうなずく。
ほ、ほんと、そういうつもりで言ったんじゃないんだけど…。
そういうことはちゃんと言わないと不安になるばかりだし、相手にも伝わらないと、この間感じたばかりだから、ちゃんと言っておこうとか、そういう意味で…。

「不安になる必要なんてないよ」
「た、辰也」
「オレがどれだけを好きか、教えてあげる」







教えてあげる
13.10.13

室ちん祭り〜
岡村先輩の話を上げた時、リンクした氷室ネタがあると言ってましたがこれのことです
岡村先輩の好きな人を見た時「初心そうで…」って氷室が言ってたのはなんとなく彼女とヒロインの雰囲気が似てるからそう思ったのです






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