ダイゴさんと結婚する話・プロポーズ翌朝
「ん……」
深い眠りから、私は自然と目を覚ます。慣れない優しい感触のシーツに、いつもと違う角度から差し込む朝の陽射し。ああ、そうだ昨日は私の誕生日を祝うために、ダイゴさんがカナズミのホテルに連れてきてくれたのだ。
私はベッドに入ったまま、おそるおそる自分の左手を確かめる。薬指には確かに昨日ダイゴさんからもらった婚約指輪がある。昨日の出来事は、夢じゃない。昨夜、私はダイゴさんにプロポーズされたのだ。
「ダイゴさんは……」
隣で眠っていたはずのダイゴさんは、もう起きたようで隣にはいない。上半身を起こしてきょろきょろと周囲を探すと、洗面台の方から音がした。
「おはよう」
レストルームからダイゴさんが顔を出す。もう身支度を済ませたようで、朝とは思えないさわやかな笑顔を見せている。
「おはようございます」
「いい朝だね」
ダイゴさんは私の隣に座ると、私の左手を手に取った。そして、嬉しそうに目を細める。
「夢じゃないんだね」
ダイゴさんの視線の先にあるのは、昨日ダイゴさんからもらった婚約指輪。大きなダイヤがきらきらと輝いている。
「プロポーズを受けてくれてありがとう」
「私こそ……」
「夢だったらどうしようかと思った」
ダイゴさんの困ったような笑みに、私は目を丸くする。ダイゴさんがそんなことを言うなんて。
「ダイゴさんも不安だったんですか?」
「そりゃあね。内心ドキドキしてたよ」
「いつもあんなに自信満々なのに」
「さすがに一生に一度のことだからね」
ああ、そうか。私にとって一生に一度であるように、ダイゴさんにとっても一生に一度なんだ。いつも自信家のダイゴさんが不安に思うなんて、と思っていたけれど、生涯一度のプロポーズ、ダイゴさんだって緊張して当然だ。
そう、たった一度の機会を、私にくれた。その事実に心が震える。
「必ずきみを幸せにするよ」
「私も……私もダイゴさんに幸せだって思ってもらえるようにがんばります」
私はダイゴさんに体を寄せる。
ダイゴさんに与えてもらってばかりでは寂しいから。私もダイゴさんに幸せを感じてもらいたい。私と結婚してよかったと、そう思ってもらいたい。
「ボクはもうにたくさん幸せをもらっているよ」
ダイゴさんは私の肩を抱き寄せて、優しい声で囁いた。甘い響きが、私の中にゆっくりと広がっていく。
「それを言うなら私だって」
私も、もうダイゴさんにたくさんの幸せをもらっている。
きっと今、私は世界一幸せだから。