ダイゴさんと結婚する話・結婚指輪
ダイゴさんのプロポーズを受けて、一ヶ月がたった。お互いの親への挨拶も済ませーーダイゴさんのご両親へ伺う際は人生で一番緊張したーー、結婚式の段取りも始めている。結婚の準備は順調と言っていいだろう。
さて、今日はその準備のひとつとして、ダイゴさんとアクセサリー店にやってきた。理由はもちろん、結婚指輪を選ぶため。
「あまり装飾はないほうがいいのかな。普段からつけるものだし」
「そうですね、結婚してる知り合いもみんなシンプルなものにしてますし……」
話しながら、アクセサリー店のドアをくぐった。店員の案内に従って、私たちは中へと入っていく。
「わ……」
店内では数多くのアクセサリーが輝きを放っている。そのどれもが強い輝きなのに上品さも兼ね備えており、このブランドのセンスの良さをうかがわせる。
「好きなものを選んでね」
「はい」
ダイゴさんに促され、私は胸を高鳴らせながら指輪のショーウィンドウをのぞき見る。しかし、指輪の横の値札を見て思わずのけぞってしまった。
高い……! ど、どれも高い……! 私が普段つけているアクセサリーとは比べものにならない金額に、ひっくり返りそうになる。お金はダイゴさんが出してくれるとは言え……いや、むしろだからこそ、この金額に気後れしてしまう。
事前にダイゴさんと相談して訪れたアクセサリー店なので値段の覚悟はしてきたけれど、目の当たりにするとその覚悟も崩れ去る。あまりの金額に頭がくらくらしてきた……。私がここにいること自体が場違いに思えてきて、思わず頼るようにダイゴさんの服の裾をつかんでしまった。
「?」
「ちょ、ちょっと深呼吸を……」
ダイゴさん以外には気づかれないよう、そっと深呼吸をした。ひとつ、ふたつ息を吐けば、だいぶ落ち着いてきた。……ような気がする。
あまりの金額におそれおののいてしまったけれど、ダイゴさんの立場では安価なものを身につけるわけにもいかないのだろう。ここは値段は見ないようにして、デザインで選んだほうがよさそうだ。……値段を見てしまったら、きっと一生決められない。
「大丈夫、がいいなと思ったものを教えてね」
私の戸惑いに気づいたのだろう、ダイゴさんは包み込むような穏やかな笑みで私を見つめた。ダイゴさんの気遣いを感じて、私も顔を綻ばせる。
ダイゴさんの言葉はとても嬉しい。でも。私はダイゴさんの顔をじっと見つめる。
「ダイゴさんもちゃんと選んでくださいね。だってダイゴさんもつけるんですから」
結婚指輪は男性もつけるもの。ダイゴさんもここで選んだ指輪をこれから先ずっとつけるのだ。ダイゴさんも気に入ったものでないといけない。
ダイゴさんは私の言葉に一瞬目を丸くしたのち、嬉しそうに目尻を下げた。
「そうだね、そうだよね。ボクもずっとつけるものだから」
「はい。一緒に選びましょう」
「うん」
私たちは二人で話しながら、指輪を選び始めた。立爪やソリテールリングは日常生活でつけるには向かないだろう。シンプルなプラチナリングか、宝石が埋め込まれたタイプのものか……。二人で相談しながら、私たちは最終的にフルエタニティの指輪を選んだ。指輪の一周をダイヤモンドが途切れることなくデザインされたフルエタニティは、永遠の象徴だ。
サイズを確認して、内側の刻印はお互いのイニシャルと結婚の日付を入れることにした。
「出来上がりが楽しみだね」
「はい、とっても」
指輪ができるのは三ヶ月後。きっと結婚の準備をしていたらあっという間だ。その日が来るのが、今から待ち遠しくて仕方ない。