ダイゴさんと結婚する話・結婚式

 今日は私とダイゴさんの結婚式だ。
 ダイゴさんからのプロポーズを受けて半年あまり。今日まで長かったような、あっという間だったような。不思議な感情に包まれながら、私はウェディングドレスに袖を通した。華やかなウェディングドレスは見た目と裏腹になかなか重量があり、今日の式の重みを感じさせる。
 そう、結婚式は決して私とダイゴさんだけのものではない。カナズミシティのホテルの中にある結婚式場には、多くの人が集まっている。その中にはダイゴさんの仕事関係の招待客も多い。結婚式は、彼らに向けたアピールの場でもあるのだ。
 先に一人入場したダイゴさんを追いかけるかたちで、私は式場に足を踏み入れた。一歩足を前に出すごとに、言いしれぬ緊張感に包まれる。
『あまり緊張しないでね。ボクたちの結婚式なんだから、花嫁が一番楽しまないと』 
 式の前のダイゴさんの言葉を思い出す。しかし、周囲にいる壮年の男性たち……おそらくダイゴさんの仕事関係の招待客が目に入るたびに、体が強ばる。粗相をするわけにはいかないのだ。
 短いはずのウェディングロードが、やたらと長く感じる。緊張と高揚感で、心臓がうるさいぐらいに鳴っている。
(あ……)
 半透明の白いベールに向こうに、私を見つめるダイゴさんの姿が目に入る。タキシード姿のダイゴさんは、穏やかな優しい笑みを浮かべている。
 ああ、ダイゴさんがいる。私の大好きな、ダイゴさんが。
 結婚式は私たちだけのものじゃない。わかっているけれど、それでも心が震える。私は今日、世界で一番愛する人と結婚するのだ。
 ウェディングロードを歩き終え、私はダイゴさんの隣に立った。私たちは並んで前を向き、牧師の言葉を待つ。
「新郎ダイゴは、新婦を永遠に愛することを誓いますか?」
「はい、誓います」
「新婦は、新郎ダイゴを永遠に愛することを誓いますか?」
「はい。誓います」
 誓いの言葉を交わして、私たちはお互いへ向き合う。
「指輪の交換を」
 一緒に選んだ指輪を、ダイゴさんが私の左手の薬指にはめる。窓から差す太陽の陽射しが、その指輪を温かく照らした。
 私も同じように、ダイゴさんの指に指輪をはめた。フルエタニティの指輪が、ダイゴさんの薬指で輝きを放っている。
 フルエタニティは、永遠の象徴。これから先、未来永劫お互いの愛を誓い合う指輪。揃いの指輪が、私たちの指で光っている。
 ダイゴさんが私のベールをそっと上げる。クリアになった視界に、ダイゴさんの甘い笑顔が映った。
「愛しているよ」
 私以外の誰にも聞こえない声で、ダイゴさんが囁いた。
 そして私たちは誓いのキスを交わした。触れるだけのキスは、今までダイゴさんと交わしたキスの中でもひときわ甘くて温かで、涙が出るほど幸せだった。
 結婚式は私たちだけのものではない。わかっている。けれど、でも、今このときだけは、世界は私たち二人だけのもの。