「え?最後までいてくれるんか?」
「すっげー助かるけど、マジでいいの?」

岡村先輩と福井先輩に「最後までいます」と伝えたところ、案の定そんな答えが返ってきた。
実際大変なんだろうけど、それでも決めたのだ。

昨日も思ったけど、バスケ部の人たちは真剣に部活をやっている。
本当に、信じられないぐらいに。
頼まれたからやっているとはいえ、だったら私も真剣にやらなきゃいけないんじゃないかなあと、そう思ったのだ。

明日も、遅れてきていいよと言われたけどちゃんと始めから来よう。





「んじゃ、今日の練習は終わりな」
「お疲れ様でしたー」

主将の掛け声で部員たちは一斉に上がる。
私にとっても長い一日が終わった。

「ふう…」

校門へ向かうとそこにはちょうど校門を出るところなのか、氷室がいた。

「あ、。帰るところ?」
「うん。私電車だけど、氷室は?」
「ああ、オレも」

ということは帰り道が一緒ということ。
特に何も言わず並んで駅までの道を歩きはじめた。

「ごめんね、なんか本当に巻き込んだ感じになっちゃって」
「いや、それは本当いいよ。大丈夫」
「本当?」
「うん……あ」

…そこまで言ってくれるなら、ちょっと頼ってもいいだろうか。

「あの、もしよかったらなんだけど」
「なに?」
「バスケのルール教えてくれない?」





ということで、場所は地元の駅前のファミレス。
氷室と私の地元の駅が同じということで、ここまでやってきた。
本屋で買ってきたバスケ教本を読みつつ、氷室にいろいろ教えてもらう。
バスケの知識は授業でやってたし全くないわけじゃないけど、詳しくもない。
これを機にちゃんと覚えよう。

「オフェンスは24秒以内にシュートしないといけなくて…」
「へえ…」

授業じゃやらないこともいろいろ出てくる。
それなりに知ってるつもりだったけど、そんなことなかったんだな。

「はー、結構ルールいっぱいあるんだね」
「そうだね、まあ、でもそんなに複雑じゃないから」
「うん、これならそんなに覚えるの大変じゃないかも」
「真面目だね」
「えっ?」

氷室はまじまじと私の目を見て言った。

「だって、ほとんど無理矢理頼まれてやってることなのに、明日からは一日中やってくれるっていうし、
 今はこんなふうにルールの勉強までしてる。すごいことだと思うよ」
「まあ、みんなが真面目に部活してるの見たらね。いい加減にやったら失礼だと思って」
「そう言ってくれるとありがたいな」
「そう?」
がマネージャーにいいんじゃないかって言ってのオレだし、が本当に真面目にやってくれるのは嬉しいよ」

そう言われるとこっちも嬉しくなる。
まだ始めたばかりだけど、受けてよかったかなと思える。

「それじゃもう出ようか。もう遅いし」
「あ、本当だ。あー…まだ聞きたいことあったんだけどなあ」
「じゃあ、明日も教えるよ」
「いいの?」
「お安い御用だよ」







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12.08.10