今日は朝練の日。早い時間じゃから、通学路に陽泉の生徒は見当たらない。 あくびを噛み殺しながら学校へ向かうと、目の前に見慣れた陰が二つ。 「氷室、」 大股で二人に追いついて声を掛けると、はぱっと氷室と繋いだ手を解いてしまう。 「なんじゃ、繋いだままでもいいじゃろ」 「い、いや、それはちょっと…」 「は恥ずかしがり屋ですから」 赤くなるとそれを楽しそうに見る氷室。 おうおう、後輩の幸せそうな姿っていいもんじゃ…。 「わしも彼女ほしいのう…どうやったらできるんじゃ?」 「オレに聞くんですか」 「ほかに聞くヤツおらんからの」 ワシの周りで一番持モテるのは間違いなく氷室じゃ。 氷室の聞くのが一番じゃろ。 「オレに聞かれても…女の子の意見聞いた方が早いと思いますよ」 「ああ、それもそうじゃの」 そう言っての方を向きなおす。 「え、わ、私?」 「ここに以外に女子はおらんからの」 「そうですけど…」 「で、なんでは氷室が好きなんじゃ?」 「えっ!?」 は赤くなって下を向く。 にはちょっと悪いと思うが、ワシがモテるためじゃ…頑張ってくれ…! 「やっぱり顔か!?」 「か、顔って…まあ、その、かっこいいとは思いますけど、別にその…それだけじゃ…」 「中身か!どうすればいい!?どうすれば氷室みたいにモテるんじゃ!」 「え!?」 「中身はどこが好きなんじゃ!?」 「そ、それは…や…」 「や?」 「やっぱり無理です!」 はもっと赤くなって叫びだす。 「ひ、氷室も何か言ってよ!」 「ん?いや、可愛いなあって思って」 「!バカ!そうじゃなくて!」 そう言うとは早足で一人学校に向かってしまう。 「可愛いなあ」 「…なあ」 「なんですか?」 「どうやったらモテる?」 「…さあ。オレ、先に行きますね」 「おう」 氷室は駆け足でを追いかける。 カップルっていいのう…。 ← top 紫原編→ 13.01.25 |