「おもそ〜」

今日は日直。
日本史の先生に頼まれたノートを持って職員室へ歩いていると、原がそう言ってくる。

「そう思うなら手伝ってくれる?」
「え〜」
「する気ないなら退いてください」

原はそう言うと「しょうがないなあ」と言ってノートを半分持ってくれる。
…意外。やってくれるとは思わなかった。

「でさあ、花宮とはどうなの?」
「……」

珍しいと思ったら、こういうことか。

「それが聞きたいんだったら手伝いは無駄だったわね。特に何もありません」
「うっそ」
「本当。花宮もそう言ってるんじゃない?」
「聞くと怒んだもん、あいつ」
「ああ…」

怒りそうだな、と思った。その様子が目に浮かぶ。

「じゃーマジで無駄じゃん、このノートの重み」
「いやあ、ありがとうございます。とっても助かりました」
「…あんたもいい性格してるよな」

職員室まで着く。
私としてはラッキーだったな。

…いい性格、ねえ。
確かに自分の性格を一般的に言う「いい」と思ったことはないし、花宮やら原やら、バスケ部の連中の実情を知っても関わることを厭わないと言う点では、いい性格かもね。






「花宮、閉めるよ」

今日も図書当番。
図書室を閉める時間になっても本を読み続ける花宮に言う。

「ああ」

そう言って本を閉じて図書室を出る。
今日も寒い。



「…なあ」

帰り道、花宮が珍しく話しかけてくる。

「なに?」
「…お前、原と仲良いのか?」

原。
仲はまあ、普通だろう。

「…普通。同じクラスだし、喋ったり喋らなかったり」
「あっそ」

なに、ヤキモチ?
そう言おうとして、やめた。

それを言ったら、いろんなことが壊れる気がした。