アレックスさんと別れた後、二人で辰也の部屋に来た。

「あ、メール来てる…アレックスからだ」

辰也はそう言って自分の携帯を開く。
アレックスさん、なにかな。そう思って辰也を見ていたら、突然辰也が笑いだした。

「ははっ!」
「?どうしたの?」

辰也はメールの画面を見せてくる。
私の顔は一気に真っ赤になった。

「あ、アレックスさんのバカ!!」

そこに書かれていたのは、「とタツヤの子供、楽しみにしているよ」という文章。
アレックスさん、なに言ってるの…!
だって、子供って…!子供って…!

「オレも楽しみだな」
「!バカ!」

辰也までそう言うので、思わず辰也の背中を叩いた。
二人とも、バカ…!



辰也はさっきまでのからかうような表情から一変、優しい笑顔になった。

「大人になったら、結婚しよう」

突然の言葉に、さらに顔が赤くなる。
もう、頭が沸騰しそうだ。

「た、辰也」
「しようね」

何ってるの、と言おうとしたけど、辰也の顔を見てやめる。
辰也は冗談の類で言っているわけじゃない。
私も真剣に答えた。

「…うん」

ずっと一緒にいたい。
大人になったら、将来、辰也と結婚したい。
私も、そう思っているよ。

「結婚したら、子供を作ろう」
「う、うん」
「子供が産まれたら、アレックスにバスケを教えてもらおう」

辰也は笑う。
優しい表情で、優しい声で。

「うん!」

将来はあれになりたい、これになりたい、昔はたくさんでてきたけど、今はそんなことを気軽に言うのもはばかられる年齢になってしまった。
でもね、私も一つだけ。
大人になったら、辰也と結婚したい。
そして、子供を産みたい。私と辰也の子供。

「大人になったら」の夢。
辰也と私と、幸せな家族になりたい。
もう子供じゃないけど大人でもない、「大人になったら」の小さな夢。














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14.07.04