今日の部活は他校との練習試合だ。 コートを整備して、迎える準備ばっちり。 今一年生が校門まで試合相手を迎えに行ってくれている。 「あ、来たみたい〜」 敦の言葉で体育館の入り口を見る。 いよいよだ。 「宜しくお願いします!」 選手たちが大きな声であいさつをする。 みんな、頑張れ。そう心の中で唱えた。 「更衣室はこちらです」 試合相手の人たちを更衣室に案内する。 そしたら、前の方の人が話しかけてきた。 「ねえねえ、キミマネージャー?いいなあ、うちいないんだよね」 「?はあ…」 「キミみたいな子がいたらいいんだけどねー」 突然の言葉に驚いてしまう。 なんだろう。 「あ、更衣室ここです。私はこれで」 「またね〜」 そう言って彼は手をひらひら振ってくる。 なんというか、軽い人だなあ。 * 「…よし」 コートの準備もバッチリだし、スコアの用意もした。 あとは練習試合が始まるのを待つだけだ。 「あ」 向こうのベンチを見ると、さっきの人がひらひらと手を振って来る。 どうしていいかわからず、適当に会釈した。 「」 「辰也」 「…どうしたの?」 「あ、なんかさっき話しかけられて…」 「なんて?」 辰也の口調は、心なしか随分と強い。 「さっき、うちマネージャーいないからそっちはいていいなって言われたんだけど…」 「…ふうん」 辰也は表情を険しくすると、入念にストレッチを始めた。 「ラッキー、今日室ちんに任せとけば楽できそうだね」 敦が後ろから覗きこむようにしてそう言ってくる。 「なんで?」 「多分室ちんが相手ボッコボコにしてくれるよ〜見てればわかるよ」 「?」 敦の言葉通り、今日の試合は辰也の大活躍で大勝利。 辰也の勢いは、ちょっと怖いぐらいだった。 「お疲れ様!」 「ありがと」 辰也にタオルとドリンクを渡す。 辰也はまだちょっと怖い顔をしている。 「どうしたの?」 「…ん、大丈夫」 辰也はタオルで乱暴に自分の汗を拭く。 「あ、ダメだよ。ちゃんと拭かないと」 「ん」 辰也の手からタオルと取って、辰也の額の汗を拭う。 辰也はこういうところいい加減なんだから。 ちゃんと拭かないとと風邪引いちゃう。 「ありがと、」 辰也は私の髪を撫でる。 柔らかい感触だ。 「……」 「?」 辰也は鋭い眼で相手のベンチを見る。 視線の先は、さっきの彼だ。 彼は引きつった笑顔になっている。 「どうしたの?」 「なんでもないよ。もう大丈夫だからね」 「??」 「あの男可哀相アル。ご愁傷様アル」 「オレは楽出来ていいけどね〜」 「氷室はともかくはいちゃついてる自覚ないから厄介アル」 平和で平凡な一日その1 ← top → 14.07.18 |