今日の部活は他校との練習試合だ。
コートを整備して、迎える準備ばっちり。
今一年生が校門まで試合相手を迎えに行ってくれている。

「あ、来たみたい〜」

敦の言葉で体育館の入り口を見る。
いよいよだ。

「宜しくお願いします!」

選手たちが大きな声であいさつをする。
みんな、頑張れ。そう心の中で唱えた。

「更衣室はこちらです」

試合相手の人たちを更衣室に案内する。
そしたら、前の方の人が話しかけてきた。

「ねえねえ、キミマネージャー?いいなあ、うちいないんだよね」
「?はあ…」
「キミみたいな子がいたらいいんだけどねー」

突然の言葉に驚いてしまう。
なんだろう。

「あ、更衣室ここです。私はこれで」
「またね〜」

そう言って彼は手をひらひら振ってくる。
なんというか、軽い人だなあ。





「…よし」

コートの準備もバッチリだし、スコアの用意もした。
あとは練習試合が始まるのを待つだけだ。

「あ」

向こうのベンチを見ると、さっきの人がひらひらと手を振って来る。
どうしていいかわからず、適当に会釈した。


「辰也」
「…どうしたの?」
「あ、なんかさっき話しかけられて…」
「なんて?」

辰也の口調は、心なしか随分と強い。

「さっき、うちマネージャーいないからそっちはいていいなって言われたんだけど…」
「…ふうん」

辰也は表情を険しくすると、入念にストレッチを始めた。

「ラッキー、今日室ちんに任せとけば楽できそうだね」

敦が後ろから覗きこむようにしてそう言ってくる。

「なんで?」
「多分室ちんが相手ボッコボコにしてくれるよ〜見てればわかるよ」
「?」


敦の言葉通り、今日の試合は辰也の大活躍で大勝利。
辰也の勢いは、ちょっと怖いぐらいだった。

「お疲れ様!」
「ありがと」

辰也にタオルとドリンクを渡す。
辰也はまだちょっと怖い顔をしている。

「どうしたの?」
「…ん、大丈夫」

辰也はタオルで乱暴に自分の汗を拭く。

「あ、ダメだよ。ちゃんと拭かないと」
「ん」

辰也の手からタオルと取って、辰也の額の汗を拭う。
辰也はこういうところいい加減なんだから。
ちゃんと拭かないとと風邪引いちゃう。

「ありがと、

辰也は私の髪を撫でる。
柔らかい感触だ。

「……」
「?」

辰也は鋭い眼で相手のベンチを見る。
視線の先は、さっきの彼だ。
彼は引きつった笑顔になっている。

「どうしたの?」
「なんでもないよ。もう大丈夫だからね」
「??」




「あの男可哀相アル。ご愁傷様アル」
「オレは楽出来ていいけどね〜」
「氷室はともかくはいちゃついてる自覚ないから厄介アル」











平和で平凡な一日その1
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14.07.18