「いただきます!」
「いただきます」

今日のお昼は辰也と一緒だ。
辰也の目の前には私の作ったお弁当がある。
いつも一緒に私のお弁当を食べる時は部室で食べることにしているんだけど、今日は学校側の都合でお昼は部室棟使ってはいけないらしい。
ちょっと恥ずかしいけど、今日は教室でお昼だ。
学食でお昼を食べる人も多いから教室にはそんなに人いないし、大丈夫だよね。


の卵焼きおいしいね」
「そう?ありがとう」
「いや、が作ったものならなんでもおいしいんだけど」
「もう」

そう言われると、とても嬉しくなる。
嬉しくて、また頑張って作ろうって気持ちになる。

「……」

辰也は箸を止めて私のお弁当箱をじっと見つめる。

「辰也?」

辰也の視線の先は、私の箸の先。
少し失敗してしまって辰也のお弁当には入れられなかった煮物だ。

「あ、これはね、ちょっと失敗しちゃって」
「そうなの?」

そう言っても辰也はじっと見つめてくる。
…食べたいんだね…。

「あの、本当に失敗したのだから、あんまりおいしくないからね?」

そう言って一つ箸で取る。
辰也は嬉しそうに口を開いた。

「はい」

辰也の口の中に煮物を入れる。
所謂「あーん」ってやつだ。

「おいしいよ」
「お、お世辞はいいから」
「本当だよ。の作ったものはなんでもおいしい」

辰也はにっこりの笑顔でそう言ってくれる。
…次は失敗しないよう、頑張ろう。


「あいつら教室で恥ずかしくねーのかな」
「部活中はもっとひどいぞ」

教室の隅でそんな会話が織りなされていることを、私は知らない。






「辰也、お疲れ様」

今日の部活も無事終了。
辰也に駆け寄ってタオルを渡す。
お疲れ様。

「ありがとう」
「ふふ、疲れてる?」
「そうだね、少し」
「じゃあ、今日は真っ直ぐ帰ろう?」
「うん」

辰也は私の頭を撫でる。
辰也はようくこうする。
こうされるのは、少しくすぐったくて、とても嬉しい。

「あ、またやってる〜」
「?」

敦が汗を拭きながら私たちに言う。

「何を?」
「イチャついてる」
「!」

敦の言葉にぽっと顔が赤くなる。
な…っ!

「い、イチャついてないよ!」
「今イチャイチャしてたじゃーん」
「し、してない!」
ちん前はさあ、『人前じゃやだー』とか言ってたのに最近なんか慣れちゃってるよね」
「!」

そ、そういえば…前はもっと人前では距離取っていたような…。

「……」

すっと辰也から一歩後退する。
…わ、私のバカ…。

「アツシ、余計なこと言わないでくれよ」
「ごめんなさーい」

辰也は敦を睨みつける。
これから気を付けよう…。

「ねー室ちんそんな睨まないでよ〜お菓子あげるからさー」
「いらない」
「も〜」
「せっかくも慣れて来たのに…」
「やっぱわざとだったんだねー室ちん」









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14.07.18