高校二年生のメインイベント。 それはやっぱり修学旅行だろう。 「ー、こっちこっち!」 「あ、おはよー!」 集合場所である駅に着くと、友達はすでに着いていたようだ。 「楽しみだねー、修学旅行」 「私京都って初めてなんだよね」 「あ、私もー」 私たちの修学旅行先は京都奈良だ。 よくある修学旅行先だ。 「明日の自由行動は氷室くんと回るんでしょ?」 友達が小声で聞いてくる。 一応、その予定だ。 「、おはよう」 噂をすればなんとやら。 氷室がやってきた。 「おはよう」 「楽しみだね、旅行。オレ京都の方って行ったことないな」 「私もないの。ちょっとドキドキしちゃう」 京都奈良と言えば修学旅行の定番だけど、中学の旅行先は東京だったし、関西のほうは親戚もいないので行ったことがない。 もっと遊べるような場所がいいと嘆く子もいるけど、私は楽しみだ。 「明日の自由行動は一緒に回ろうね」 「うん!」 今日時間をかけて奈良に着いたら、少ない時間でクラスで回ることになる。 でも明日はほとんど自由行動。 氷室と一緒に、いろんなところに行ってみたい。 * 「やっと着いたー!」 長旅の末、ようやく奈良に着いた。 最初の目的地は奈良公園。 「見て!鹿かわいい!」 話には聞いていたけど、奈良公園には鹿がたくさんいる。 か、かわいい…! 「鹿!鹿せんべい買おう!」 鹿をこんなに間近で見るのは初めてだ。 友達と興奮して鹿せんべいを購入して鹿に餌をあげる。 「食べてる!かわいい!」 そう言っていると、近くでシャッター音が聞こえる。 音のしたほうを振り向くと、氷室がカメラを構えていた。 「かわいいよ」 「!」 ぽっと顔が赤くなる。 写真を撮られるのは構わないんだけど、少しだけ、恥ずかしい。 「あ、氷室くん私たちのカメラでも撮って〜」 「いいよ」 友達が自分のカメラを氷室に渡す。 私もお願いすることにした。 「お願いね」 「ああ」 ドキドキしながら写真を撮ってもらう。 貴重な旅の思い出だ。 「はい、撮れたよ」 「ありがとう」 「あ、と氷室くんも撮ってあげるよ」 友達はそう言うと、私の手からカメラを奪う。 「あ」 「はい、氷室くんもカメラ」 「ありがと」 友達はカメラを二つ持つと少し私たちから離れる。 「はい、チーズ」 鹿と一緒に、氷室と写真だ。 「はい」 「ありがと」 友達にカメラを返してもらう。 ディスプレイを確認すると、私と氷室が映ってる。 嬉しいな。 「おーい氷室、ちょっとこっち来いよー」 「ああ、うん」 向こうの方で、クラスの男子が氷室を呼ぶ。 「じゃあ、また後で」 「うん」 手を振って氷室と別れる。 …ちょっとだけ、寂しいな。 「ちょっとー」 友達がぎゅっとのしかかってくる。 「寂しそうな顔しないでよ。私たちもいるんだから!」 友達の言葉に思わず笑う。 私も彼女に抱きついた。 「寂しくないよ!」 「わっ」 明日は氷室と回るし、今日は思う存分友達と回ろう。 貴重な旅行の思い出だ。 ← top → 14.07.25 |