高校二年生のメインイベント。
それはやっぱり修学旅行だろう。

ー、こっちこっち!」
「あ、おはよー!」

集合場所である駅に着くと、友達はすでに着いていたようだ。

「楽しみだねー、修学旅行」
「私京都って初めてなんだよね」
「あ、私もー」

私たちの修学旅行先は京都奈良だ。
よくある修学旅行先だ。

「明日の自由行動は氷室くんと回るんでしょ?」

友達が小声で聞いてくる。
一応、その予定だ。

、おはよう」

噂をすればなんとやら。
氷室がやってきた。

「おはよう」
「楽しみだね、旅行。オレ京都の方って行ったことないな」
「私もないの。ちょっとドキドキしちゃう」

京都奈良と言えば修学旅行の定番だけど、中学の旅行先は東京だったし、関西のほうは親戚もいないので行ったことがない。
もっと遊べるような場所がいいと嘆く子もいるけど、私は楽しみだ。

「明日の自由行動は一緒に回ろうね」
「うん!」

今日時間をかけて奈良に着いたら、少ない時間でクラスで回ることになる。
でも明日はほとんど自由行動。
氷室と一緒に、いろんなところに行ってみたい。






「やっと着いたー!」

長旅の末、ようやく奈良に着いた。
最初の目的地は奈良公園。


「見て!鹿かわいい!」

話には聞いていたけど、奈良公園には鹿がたくさんいる。
か、かわいい…!

「鹿!鹿せんべい買おう!」

鹿をこんなに間近で見るのは初めてだ。
友達と興奮して鹿せんべいを購入して鹿に餌をあげる。

「食べてる!かわいい!」

そう言っていると、近くでシャッター音が聞こえる。
音のしたほうを振り向くと、氷室がカメラを構えていた。

「かわいいよ」
「!」

ぽっと顔が赤くなる。
写真を撮られるのは構わないんだけど、少しだけ、恥ずかしい。

「あ、氷室くん私たちのカメラでも撮って〜」
「いいよ」

友達が自分のカメラを氷室に渡す。
私もお願いすることにした。

「お願いね」
「ああ」

ドキドキしながら写真を撮ってもらう。
貴重な旅の思い出だ。

「はい、撮れたよ」
「ありがとう」
「あ、と氷室くんも撮ってあげるよ」

友達はそう言うと、私の手からカメラを奪う。

「あ」
「はい、氷室くんもカメラ」
「ありがと」

友達はカメラを二つ持つと少し私たちから離れる。

「はい、チーズ」

鹿と一緒に、氷室と写真だ。

「はい」
「ありがと」

友達にカメラを返してもらう。
ディスプレイを確認すると、私と氷室が映ってる。
嬉しいな。

「おーい氷室、ちょっとこっち来いよー」
「ああ、うん」

向こうの方で、クラスの男子が氷室を呼ぶ。

「じゃあ、また後で」
「うん」

手を振って氷室と別れる。
…ちょっとだけ、寂しいな。

「ちょっとー」

友達がぎゅっとのしかかってくる。

「寂しそうな顔しないでよ。私たちもいるんだから!」

友達の言葉に思わず笑う。
私も彼女に抱きついた。

「寂しくないよ!」
「わっ」

明日は氷室と回るし、今日は思う存分友達と回ろう。
貴重な旅行の思い出だ。










 top 
14.07.25