修学旅行の夜といえば、定番の女子トーク。
私たちも例外じゃない。

「はい、の負け〜」
「うそ…」

布団に潜ってトランプをしていたけど、思い切り負けてしまった。
負けた人は罰ゲーム。

「いやーやっぱりここはが負けなきゃね」
「ど、どういう意味?」
「だってに聞きたいこといっぱいあるし〜」

楽しそうな顔でそう言われる。
罰ゲームは定番の暴露話だ。

「氷室くんどうやって告白してきたの?」
「え、えーと…」
「……」
「…えっと…」
「答えないと氷室くんに前にがうちに泊まったときの写真見せるよ」
「わかりました話します!」

泊まったときの写真って、嫌な予感しかしない。
少しだけ粘ってみたけど、観念して話すことにした。

「え、えっと…ふつうに…」
「ふつう?」
「ふつうに、公園で、その…、す、好きだよ…って…」

声がどんどん小さくなるのがわかる。
だめだ、限界…!

「も、もう無理…!」
「ちょっと!まだ序盤!」
「だ、だって…!」

枕に真っ赤な顔を埋める。
本当に、頭が沸騰しそう…。

「…もう」

そんな私の様子を見て、友達はため息をついた。

「そんなんで大丈夫なの?氷室くんと」
「大丈夫じゃない…」

一緒にいるだけでドキドキする。
それどころか、写真の氷室を見ただけで心臓が跳ねる。
手を繋いだり、キスをしたり、氷室に触れる度に死んでしまうんじゃないかと思う。

「私、氷室といたらきっと早死にする…」
「もー」

友達は私の頭を撫でてくれる。
本当に、毎日胸が痛くて、どうすればいいかわからない。






「氷室」

二日目。今日は自由行動で、各々旅館を出て行きたいところに散って行ってる。
私は氷室と一緒に京都を見て回る。


「どこ行こうか。は行きたいところある?」

駅まで歩きながら、氷室が聞いてくる。

「あのね、ここに行きたいの」

氷室に地図を見せる。
行きたいのは地主神社だ。

「ここ?」
「うん。縁結びの神様なんだよ」

そう言うと氷室は笑った。

「もう結ばれてるよ?」

ぽっと顔が赤くなった。
それは、そうなんだけど、縁結びはそれだけじゃない。

「あのね、もっと仲良くなれますようにっていうのと」
「もっと?」
「うん」
「もっとオレと仲良くなりたい?」

氷室は私の顔をのぞき込みながらからかうような口調で言ってくる。

「べ、別に変な意味じゃないからね?」

なんだか、面白がられてる。
赤い顔で反論してみたら、氷室はさらに口角をあげた。

「変な意味ってどういう意味?」
「!!」

カーッと一気に顔が熱くなる。
ぼ、墓穴掘った…!

「バカ!」
「わっ!」
「バカ!そうじゃないってば!」

氷室の背中を思い切り叩く。
そうじゃない!そういう意味じゃないから!

「ごめんごめん」
「……」

氷室は謝ってくるけど、なんだか納得できない。
頬を膨らませていると、その頬を撫でられた。

「オレもともっと仲良くなりたいよ」
「……」
「本当だよ?」

優しい口調で言われると、胸の奥が締め付けられる。
そうやって、私は今回も絆されるのだ。

「…もう」
「もう一つは?」
「え?」
「さっき、もう一つ言いたそうだったから」

確かに、もう一つある。

「…あのね」
「うん」
「ずっと一緒にいられますようにって」

氷室ともっと仲良くなって、ずっと一緒にいたい。
縁結びの神様に、お願いしたいことだ。

「わっ」
「うん。ずっと一緒にいよう」
「ひ、氷室!離して!」

氷室は急に抱きしめてくる。
こ、こんな公衆の面前で!

「大丈夫、旅したら恥は捨てろだっけ?そう言うじゃないか」
「いやいやいや!そもそも周りにまだ陽泉の人たちいるし!」

確かに旅の恥はかき捨てって言うけど、ふつうに帰った後に会う人いっぱいいます…!

「…残念」
「も、もう…」

まだ今日は始まったばかりなのに、すでに顔が熱くて死にそうだ。

「お賽銭、奮発しないといけないな」

氷室はつぶやく。

「だって、絶対に叶えてもらわないと」

私もその言葉に頷いた。
氷室ともっと、仲良くなりたい。近付きたい。
そして、ずっとずっと一緒にいたい。
どうか、叶いますように。










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14.08.01