修学旅行最終日。
今日は午前中に少しクラスで京都を回って、午後には秋田に帰る。

「うーん…」
「どうしたの?」

おみやげ屋の前で悩んでいると、氷室がやってきた。

「部のみんなへのおみやげ。どうしよう…」

おみやげ係に任命されてしまったので、部のみんなに何か買って帰らないといけない。
食べ物にすることは確定しているんだけど…。

「これでいいんじゃないか?」

氷室は目の前にあったクッキーを手に取る。

「…適当に選んだ?」
「適当でいいんだよ。が買ったものならみんな喜ぶ」
「それは氷室だけなんじゃ…」
「男子なんてそんなものだよ」

そうなんだろうか…と思いつつ、確かに悩んでいても仕方ないし、さっさと選ぶことにした。
さっき氷室が選んだクッキーでは数が足らないから、その隣にあった八橋にしよう。

「お金は後で徴収ね」
「うん」

ここはひとまず私が出すけど、後で二年部員の数で割ってみんなからお金は集めないと。

「……」
「氷室?」

会計を済ませて戻ると、氷室がずいぶんと寂しげな表情をしている。
心配になって声をかけた。

「…修学旅行、終わりだと思うと寂しいね」
「…うん」

高校生活の中で一番と言っていいほどのビックイベント。
その修学旅行も、もうすぐ終わる。

「ほかにも行きたいところいっぱいあったし、時間が足りないね…」
「じゃあ、今度は二人で来ようか」

そう言われてぽっと顔が赤くなる。
京都には日帰りでは来れない。

「い、いつかね」
「いつか?」
「…だって…」

恥ずかしくて下を向いてしまう。
二人で旅行なんて、そんなの。

ー」
「!」

友達の声がする。
慌てて振り向いた。

「あ、私行くね!」

振り向いた先で友達が私を呼んでいる。
慌てて友達のところへ走った。

、どしたの?なんか顔赤いけど」
「うん、ちょっと…」

氷室のところから脱出して、顔を仰ぐ。
二人で旅行、かあ…。
一緒にいるだけでドキドキするのに、そういうことができる日が来るんだろうか。







「あ、おかえり〜」

次の日、早速今日からバスケ部の練習だ。
部室へ行くと、敦がそう言ってくれるからうれしくなる。

「ただいま」
「おみやげは?」

…狙いはそれか。
ため息をつきながらおみやげに持ってきた八橋を出す。

「はい。一個ずつね」
「えー」
「えーじゃない」
「成長期舐めんなし」

このままじゃ食べ尽くされそうなので、敦が一つ食べたところで八橋の箱を引っ込めた。

「お、久しぶりじゃな
「岡村先輩」

部室に岡村先輩が入ってくる。
さっきの八橋を差し出した。

「おみやげです」
「おー、ありがとうな。楽しかったか?」
「はい!」

笑ってそう言うと、岡村先輩も笑ってくれる。
そんな話をしている内に、みんな集まってきた。

「八橋うめー」
「京都懐かしいなー」

先輩たちは去年のことを懐かしんでいるようだ。

が作ったもののほうがおいしいけどね」

氷室がひょいと顔を出す。
一昨日の夜あげたものの話だろうか。

ちん作ったの?」
「うん。体験学習で」
「へーちょうだい」
「あ、ごめん…全部家族に上げちゃった」
「えー。ひどい〜」

敦は唇を尖らせる。

「また今度ね」
「ぶー」

拗ねる敦に、それを笑う先輩たち。
修学旅行の非日常から、いつもの日常に戻ってきた。
修学旅行が終わってしまったのも楽しかったけど、やっぱりここも心地いい。










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14.08.22





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