修学旅行最終日。 今日は午前中に少しクラスで京都を回って、午後には秋田に帰る。 「うーん…」 「どうしたの?」 おみやげ屋の前で悩んでいると、氷室がやってきた。 「部のみんなへのおみやげ。どうしよう…」 おみやげ係に任命されてしまったので、部のみんなに何か買って帰らないといけない。 食べ物にすることは確定しているんだけど…。 「これでいいんじゃないか?」 氷室は目の前にあったクッキーを手に取る。 「…適当に選んだ?」 「適当でいいんだよ。が買ったものならみんな喜ぶ」 「それは氷室だけなんじゃ…」 「男子なんてそんなものだよ」 そうなんだろうか…と思いつつ、確かに悩んでいても仕方ないし、さっさと選ぶことにした。 さっき氷室が選んだクッキーでは数が足らないから、その隣にあった八橋にしよう。 「お金は後で徴収ね」 「うん」 ここはひとまず私が出すけど、後で二年部員の数で割ってみんなからお金は集めないと。 「……」 「氷室?」 会計を済ませて戻ると、氷室がずいぶんと寂しげな表情をしている。 心配になって声をかけた。 「…修学旅行、終わりだと思うと寂しいね」 「…うん」 高校生活の中で一番と言っていいほどのビックイベント。 その修学旅行も、もうすぐ終わる。 「ほかにも行きたいところいっぱいあったし、時間が足りないね…」 「じゃあ、今度は二人で来ようか」 そう言われてぽっと顔が赤くなる。 京都には日帰りでは来れない。 「い、いつかね」 「いつか?」 「…だって…」 恥ずかしくて下を向いてしまう。 二人で旅行なんて、そんなの。 「ー」 「!」 友達の声がする。 慌てて振り向いた。 「あ、私行くね!」 振り向いた先で友達が私を呼んでいる。 慌てて友達のところへ走った。 「、どしたの?なんか顔赤いけど」 「うん、ちょっと…」 氷室のところから脱出して、顔を仰ぐ。 二人で旅行、かあ…。 一緒にいるだけでドキドキするのに、そういうことができる日が来るんだろうか。 * 「あ、おかえり〜」 次の日、早速今日からバスケ部の練習だ。 部室へ行くと、敦がそう言ってくれるからうれしくなる。 「ただいま」 「おみやげは?」 …狙いはそれか。 ため息をつきながらおみやげに持ってきた八橋を出す。 「はい。一個ずつね」 「えー」 「えーじゃない」 「成長期舐めんなし」 このままじゃ食べ尽くされそうなので、敦が一つ食べたところで八橋の箱を引っ込めた。 「お、久しぶりじゃな」 「岡村先輩」 部室に岡村先輩が入ってくる。 さっきの八橋を差し出した。 「おみやげです」 「おー、ありがとうな。楽しかったか?」 「はい!」 笑ってそう言うと、岡村先輩も笑ってくれる。 そんな話をしている内に、みんな集まってきた。 「八橋うめー」 「京都懐かしいなー」 先輩たちは去年のことを懐かしんでいるようだ。 「が作ったもののほうがおいしいけどね」 氷室がひょいと顔を出す。 一昨日の夜あげたものの話だろうか。 「ちん作ったの?」 「うん。体験学習で」 「へーちょうだい」 「あ、ごめん…全部家族に上げちゃった」 「えー。ひどい〜」 敦は唇を尖らせる。 「また今度ね」 「ぶー」 拗ねる敦に、それを笑う先輩たち。 修学旅行の非日常から、いつもの日常に戻ってきた。 修学旅行が終わってしまったのも楽しかったけど、やっぱりここも心地いい。 ← top (デート編)→ 14.08.22 ![]() 押してもらえるとやる気出ます! |