WCの予選が始まった。
オレたちは順調に勝ち進み、明日の試合に勝てば本選出場が決まる。

「……」

大きく深呼吸をする。
柄にもなく緊張している。

「…

今一番会いたい人の名前を呟く。
もちろん返事は帰ってこないけど。

…電話をかけてみようか。
いや、それより、直接話がしたい。会いたい。

そう思った瞬間には、オレは自分の部屋を出ていた。





オレとの家は近い。
あっという間にの家の前に着いて、の携帯を鳴らして呼び出した。

「氷室!」

は慌てた様子で玄関から出てくる。
そんな様子を見ると申し訳なさがこみあげてくるけど、止められなかったんだ。

「急にごめんね」
「それはいいけど…どうしたの?」
の顔が見たくなって」

の顔を見て、すっと心が軽くなるのを感じる。
に会いたかった。
大好きなに。

「…緊張してるの?」
「そりゃ、少しね」
「大丈夫だよ。うちのチーム強いもん。頑張ってね」
「うん」

をじっと見つめる。
が好きだよ。
だからに触れたい。抱きしめたい。キスがしたい。
衝動が抑えきれない。


「…っ」

出来る限り優しく、そっとキスをする。
触れた唇が、熱くなる。

「…っ…」

もう止まらない。

「…、はあ…っ」

息継ぎをする暇もなく、何度も、何度も、熱いキスをする。
ずっとずっとしたかった。
に触れたい。が欲しいよ。

「…っ」
「…

名前を呼ぶと、は赤くなった顔を向ける。
そんなから、顔を背けた。

「…うん。もう、帰るよ」
「え…」
「おやすみ」

のおでこにキスをする。
これでいい。もう大丈夫だ。

「…あの」
「?」
「…おやすみなさい」
「また明日」

ほんの少しだけ後悔がよぎる。
に触れないことで、が少しでもオレを欲しいと思ってくれたら、なんて浅ましい考えを抱いていたけど、これで全部振り出しだろう。
でも、それでもいい。
に触れたかった。だからいいんだ。








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14.10.29














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