WCの予選が始まった。 オレたちは順調に勝ち進み、明日の試合に勝てば本選出場が決まる。 「……」 大きく深呼吸をする。 柄にもなく緊張している。 「…」 今一番会いたい人の名前を呟く。 もちろん返事は帰ってこないけど。 …電話をかけてみようか。 いや、それより、直接話がしたい。会いたい。 そう思った瞬間には、オレは自分の部屋を出ていた。 * オレとの家は近い。 あっという間にの家の前に着いて、の携帯を鳴らして呼び出した。 「氷室!」 は慌てた様子で玄関から出てくる。 そんな様子を見ると申し訳なさがこみあげてくるけど、止められなかったんだ。 「急にごめんね」 「それはいいけど…どうしたの?」 「の顔が見たくなって」 の顔を見て、すっと心が軽くなるのを感じる。 に会いたかった。 大好きなに。 「…緊張してるの?」 「そりゃ、少しね」 「大丈夫だよ。うちのチーム強いもん。頑張ってね」 「うん」 をじっと見つめる。 が好きだよ。 だからに触れたい。抱きしめたい。キスがしたい。 衝動が抑えきれない。 「」 「…っ」 出来る限り優しく、そっとキスをする。 触れた唇が、熱くなる。 「…っ…」 もう止まらない。 「…、はあ…っ」 息継ぎをする暇もなく、何度も、何度も、熱いキスをする。 ずっとずっとしたかった。 に触れたい。が欲しいよ。 「…っ」 「…」 名前を呼ぶと、は赤くなった顔を向ける。 そんなから、顔を背けた。 「…うん。もう、帰るよ」 「え…」 「おやすみ」 のおでこにキスをする。 これでいい。もう大丈夫だ。 「…あの」 「?」 「…おやすみなさい」 「また明日」 ほんの少しだけ後悔がよぎる。 に触れないことで、が少しでもオレを欲しいと思ってくれたら、なんて浅ましい考えを抱いていたけど、これで全部振り出しだろう。 でも、それでもいい。 に触れたかった。だからいいんだ。 ← top → 14.10.29 |