WC予選は先日終わった。オレたちは無事通過。
今日は、オレの誕生日だ。

「氷室!もう帰れる?」

練習後、が嬉しそうな顔でオレの元へやってくる。
今日はケーキを買って二人でお祝いする約束をしている。
オレの誕生日なのに、の方が嬉しそうだ。





「誕生日おめでとー!」
「ありがと」

オレの部屋でケーキを並べて、が高い声でおめでとうをくれる。
なんて幸せな誕生日だろう。

「マフラーだ」

がくれたプレゼントはマフラーだ。
さっそく首に巻いてみる。
暖かい。

「明日から、毎日着けるよ」
「うん」

毎日と言わずずっとつけていたいぐらいだ。
がくれるプレゼントが、こんなにも嬉しいとは。



マフラーをタンスにしまって、の名前を呼ぶ。
はオレに体をくっつける。

、好きだよ」
「私も」
に祝ってもらって、すごく嬉しい」

抱きしめて耳元で囁くと、がオレの腕の中で身を捩る。
可愛いな。



その状態で名前を呼べば、はゆっくり目をつぶる。
キスの合図だ。

「…ん…」

あ、まずいな。
やはり、に触れると、もっともっとと思ってしまう自分がいる。
抑えが効かなくなる前に、体を離した。
そうしたら、がぎゅっと自身の手を握った。

?」
「え、っと…あの、ちょっと暑くて」
「ああ。ちょっと温度下げようか」

もう寒いからエアコンをつけている。
設定温度を下げるために、リモコンが掛かっている壁の方へ行った。

「……」

エアコンを設定してまた座ると、は青い顔をする。
突然のことに、心配になっての名前を呼ぶ。


「…っ」

の顔をのぞき込むと、は両手で顔を覆ってしまった。
具合が悪いという感じではない。
何か、思い詰めているような表情だ。
さっきまであんなに嬉しそうにしていたのに、どうして。

、どうしたの?」
「…なんでもない」
「なんでもないって顔じゃないよ。、ちゃんと話して」

はオレから目をそらすから、無理矢理こちらを向かせた。
がこんな顔をしているのはオレのせいの可能性が高い。
オレの部屋で二人きりのときに、いきなり表情を曇らせたのだから。
ただ、オレはなにをしたかわからない。
ちゃんと、に話を聞きたい。

「…へ、変なこと、言ってもいい?」
「うん」
「…嫌いになったり、しないでね」
「当たり前だろ」

のことを嫌いになんてなるわけがない。
を安心させるように、優しく頭を撫でた。

「…あのね」
「うん」
「…もっと、ね」
「うん」

はゆっくり、戸惑いながら口を開く。
心の深いところを探るように。
どうやら悲しいだとか怒っているだとかのネガティブな話ではないようだ。
内心、ほっと安堵する。

「…氷室に、触りたいの」

安堵したのも束の間、の言葉に心臓が音を立てて跳ねる。
触りたい、が、オレに。

「……」

吸い込まれるように、にキスをする。
なにも考えられない。
考えるより先に、体が動く。言葉が出てくる。

「…
「う、うん…」
「…触りたいって言うのは、これ以上のこと?」

はゆっくり、でも確かに頷いた。
次の瞬間、はオレの腕の中にいた。


「…ご、ごめんね」
「どうして謝るの?」
「だって、この間ダメだって言ったばっかりなのに…」
「いいんだよ、そんなことは。もうどうでもいい」

確かにに拒まれたのはついこの間のことだ。
でもそんなことどうだっていい。
そんなのは関係ない。
今、がオレに触れたいと思ってくれている。
オレと同じ思いを抱いている。

が好きだよ。オレはに触れたい。だから、も同じこと思ってくれて、嬉しいんだよ」

にキスをする。さっきのような触れるだけの軽いキスじゃない。
熱い、情熱的なキスだ。

「…辰也」

はオレの名前を呼ぶ。
ずっと、呼んでほしかった名前だ。

「好きなの」
「うん」
「すごく好きで、だから、…もっと、欲しいの」

オレは夢でも見ているんじゃないかと思う。
こんな幸せが、一気に降り注いでくるなんて思いもしなかった。
にキスをして、その感触を確かめる。
夢じゃない。
目の前にがいる。がオレの名前を呼んで、好きだと言ってくれる。
がオレを欲してくれている。

幸せで、頭がパンクしそうだ。







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14.10.30














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