オレの家を出て、を家まで送っていく途中、が白い息を吐く。 「寒い?」 「ん、ちょっと」 「もっとこっちおいで」 がオレのほうに近付く。 くっついていると歩く難いけど、それでも少しでも近くにいたい。 「どうしたの?」 「ふふ」 はオレの首元を見て微笑む。 がくれたマフラーをさっそく巻いているからだろう。 プレゼントっていいな、オレもも温かい気持ちになる。 「幸せそうだね」 の嬉しそうな顔を見て、囁くように呟いた。 は可愛い顔でオレを見上げる。 「…辰也こそ」 「うん。最高の誕生日だよ。素敵なプレゼントを2つももらえた」 「2つ?」 「うん、マフラーと」 にキスをする。 マフラーと、と、最高のプレゼントだ。 「あ、あのね。プレゼントは、マフラーだけで…さっきの、あれはね」 はオレの服の袖を掴んで、恥ずかしそうに口を開く。 「プレゼントとか、そういうつもりじゃなくて…」 「?」 「…私もしたかったの!それだけ!」 は真っ赤な顔でそう言った。 反射的にを抱きしめる。 「」 あまりの嬉しさに、頭がぼーっとする。 何も考えられない。のことだけで頭がいっぱいだ。 「嬉しすぎて、頭が割れそうだ」 そう言うと、は笑い出す。 本気なんだけどな。 「…名前で呼んでくれたのも、呼びたかったから?」 そう聞くと、は小さくうなずいた。 「全部、そうだよ。辰也のことが好きだから…名前で呼びたくて、もっと、触りたくなって」 の言葉が、胸に沁み渡って行く。 オレも同じだ。 が好きだから、名前を呼びたい、呼んでほしいと思った。 が好きだから、もっと触りたくなって、に触ってほしいと思ったよ。 二人で話していると、あっという間にの家の前に着いてしまう。 家が近くて行き来しやすいのは嬉しいけど、この時間がすぐ終わってしまうのは惜しいな。 「辰也、あのね」 「うん」 「さっきも言ったけど、毎年辰也の誕生日、お祝いするよ」 「うん」 「辰也がおじいちゃんになっても、ずっとだよ」 「うん」 の言葉に嬉しくなって、を抱きしめる。 上着の上からでも、の温もりが感じられる。 その温もりが先ほどの行為を思い出させて、柄にもなく頬を赤くした。 「、ずっとだよ」 「うん」 「ずっと一緒にいよう」 「うん」 ただの口約束だとわかってる。 一緒にいられる保証なんてどこにもない。 だけど、とだったら、ずっと一緒にいられる気がするよ。 「」 「…うん」 「ダメだね、一緒にいると、ますます離れられなくなる」 「また、明日ね」 「うん」 にキスをして去ろうとする。 そうしたら、今度はが背伸びをしてキスをしてきた。 「おやすみ」 「…おやすみなさい」 、ずっと一緒にいよう。 ただの口約束を、本当にしよう。 ← top → 14.10.30 |