「、おかえりなさい」 「お母さん、ただいま!」 試験が終わり、秋田に帰ってきた。 家に着くとお母さんが笑顔で出迎えてくれた。 「大丈夫そう?」 「うん。今週中に郵便で合否届くって。変なことしてないから大丈夫だと思うけど…」 「そう。疲れたでしょ?ご飯できるまで休んでなさい」 「うん」 そう言って自室に戻る。 ベッドに座ると、疲れが一気に押し寄せる。 長旅だったし、試験も緊張したし当然と言えば当然だ。 鞄の中から携帯を取り出して、時間を確認する。 もう部活は終わっている時間だ。 着信履歴を開いて、辰也の携帯に電話を掛ける。 下校時刻も過ぎているから、自主練も終え帰宅しているはずだろう。 何度かのコール音の後、辰也の声が聞こえてきた。 『もしもし、?』 辰也の声を聞いた瞬間、心が安らいだ。 たった一言、辰也が私の名前を呼んでくれるだけでこんなにも心が穏やかになる。 嬉しくなってベッドに寝転がる。 「辰也、帰ってきたよ」 『お帰り。どうだった?』 「たぶん大丈夫」 『そっか、よかった。疲れただろ?今日はゆっくり休んで』 「辰也の声聞いたら飛んじゃった」 辰也の声を聞いたら、疲れ何てどこかに飛んで行ってしまった。 笑ってそう言うと、辰也は電話の向こうで黙ってしまう。 「辰也?」 『、待ってて。今そっちに行くから』 「え!?」 辰也の言葉を聞いて、慌ててベッドから起き上がる。 来るって、今から!? 「辰也、部活してきたでしょ?疲れてるんじゃ」 『の声聞いたらどこかに飛んだよ』 「あ…」 『それより今会いたい。ダメかな』 きっと辰也は眉を下げたあの顔を電話の向こうでしているのだろう。 その表情を想像してしまったら、「ダメ」なんて言えるはずもない。 「う、うん…ちょっとだけね?」 『ああ。今から行くから、着いたらまた電話するね!』 そう言って辰也は電話を切る。 まさか本当に来るとは、辰也らしいというか、なんというか。 とりあえず鏡を見て髪を整える。 「あら?どこか行くの?」 「ちょっとコンビニ!」 お母さんにそう言って家を出る。 玄関の外で辰也を待つ。家は近いから辰也はすぐに来るだろう。 「!」 少し待っていると、辰也の声が聞こえてくる。 彼の姿を見つけて、大きく手を振った。 「辰也!」 「、電話するって言っただろ?中で待っててくれればよかったのに」 そう言って辰也は私のもとへ駆け寄ってくる。 私も小走りで辰也のほうへ向かう。 「私も会いたかったから」 私だって本当は会いたかった。 今だけじゃない。いつだって辰也に会いたいと思ってる。 「オレも」 辰也は屈んで私にキスをする。 触れた唇から温かくなる。 「ああ、冷えてる。上着着て」 辰也は私に触れると、少し驚いた顔をして自分の上着を私に着せた。 「大丈夫だよ。辰也こそ寒いでしょ?」 「オレは走ってきたから大丈夫」 「でも」 「じゃあこうしよう」 そう言って辰也は私をぎゅっと抱きしめてくる。 確かにこれなら私も辰也も温かい。 「あったかい?」 「うん」 抱きしめあうと心も体も温かくなる。 比喩じゃなくて、本当にそう思う。 辰也が好きだなって、そんな気持ちで包まれていく。 ← top → 15.07.31 |