学校から帰ると、家に受験した大学から無事合格通知が届いていたた。
これで私の受験生活は終了だ。
肩の荷が下りて、ほっと安堵の息を吐いた。

「よかったわねえ、おめでと。今日はの大好物にしちゃう!」
「ありがと、お母さん」

合格通知を見たお母さんは笑顔でそう言ってくれる。
私の大好物とはなんだろう。お母さんの作ってくれる夕飯、楽しみだ。

「……」

辰也にももちろんすぐに知らせるべきだろう。
まるで自分のことのように私の受験を心配してくれていたのだから。
だけど、辰也は明日東京に行くのだ。
東京に行き、スポーツ推薦をもらった学校で最終確認の面談をする予定になっている。
私の受験と違って意思確認の面談のみなので短時間で済むらしく、明日の早朝東京に向かい、面談をしてすぐにこちらに帰ってくる予定らしい。
テストがないとはいえ、受験は受験。しかも明日の朝早くに出発するはずなので、あまり辰也の邪魔をしたくない。
いろいろ考えた結果、メールで報告することにした。

「合格したよ、っと…」

自室で辰也にメールを打った。
さすがに寝るには早いので、何かしら返信がくるだろう。
来なかったら来なかったで、きっと明日のために集中しているのだろうから仕方ない。

「わっ!?」

そう思っていたのにメールを送ってすぐに携帯が鳴る。
メールの着信音ではなく電話だ。しかも辰也の。
まさか電話、しかもこんなにすぐに来るとは。

「もしもし、辰也?」
、おめでとう!』

辰也は開口一番に嬉しそうな声でそう言ってくれる。
私は思わず笑顔になった。

「ありがと」
『メールなんて水臭いじゃないか。遠慮したんだろ?』
「ん…辰也明日早いし」
『遠慮なんていらないよ。むしろこんな報告元気になれる』
「ふふ、ありがとう」

辰也は優しい。私の見に起きたことを、まるで自分のことのように喜んでくれる。

『お祝いしなきゃ、今からそっちに』
「今からはちょっと…今度ゆっくりやろう?」

辰也はこの間と同様今からこっちに来そうな雰囲気だけど、今日はさすがに制止する。
辰也は明日早いのだから、今日はゆっくり休んでもらいたい。

『そっか…うん。そうだね。今度ゆっくりやろうね』
「ありがとう。辰也は明日…頑張ってとはちょっと違うかな?」
『そうだね…まあ、頑張ってくるよ』
「うん。長旅だし、気を付けてね」
『大丈夫だから。帰ったら連絡するね』
「うん!」

そのまま、夕飯ができるまでの間辰也と電話でなんでもないことをぺらぺらとしゃべっていた。
そして、次の日。


「あれ…」

部活の帰り、一人で家までの道を歩いていると、携帯に辰也から電話が掛かってきた。
きっと帰ってきたんだ。胸を弾ませながら電話に出た。

「もしもし」
、今平気?』
「うん」
『帰ったよ、今駅なんだ』
「おかえりなさい。そっち行こうか?私ちょうど駅出たところだし」
『大丈夫だよ、疲れてるだろ?』
「辰也の声聞いたら飛んじゃったよ」

この間を同じことを言うと、辰也が嬉しそうな声で私の名前を呼んだ。

『じゃあ、駅で待ってる』
「うん」

そう言って私は踵を返して先ほどまでいた駅へと向かう。
辰也を待たせないようにしなくっちゃ。


「辰也!」

早歩きで駅まで来ると、辰也は駅前に佇んでいた。
コートとマフラーに身を包んで、少し寒そうにしている。

「おかえりなさい」

辰也のもとに駆け寄ってそう言った。
辰也は私の言葉を聞いて微笑んでくれる。

「ただいま。、おめでとう」
「ありがとう」

昨日連絡した受験のことだろう、辰也は真っ先にお祝いの言葉を言ってくれる。

「辰也、特に問題なさそう?」
「ああ。書類ももらってきたし、問題ないよ。大丈夫」

そう言いながら、私と辰也は歩き出す。
これで私も辰也も受験は一段落だ。
WCに集中することができる。

「もうすぐWCだもんね」
「ああ…最後になるのか」

あと一か月でWCが始まる。
WCが終わったら、私たちは部を引退することになる。

「頑張ろうね」
「うん」

辰也と顔を見合わせて、そう決意する。
頑張ろう。
最後の大会、悔いのないように頑張らなくちゃ。





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15.08.07