12月。
いよいよ本格的に冬の様相だ。

、おはよう」
「辰也」

朝、学校までの道のりを歩いていくと、辰也に会った。
辰也もコートを着てしっかり防寒している。

「寒いねー」
「ああ…冬は苦手だ」

辰也は大きくため息を吐きながらそう言った。
辰也は寒いのがどうにも苦手らしい。

「雪、ずっとだね。溶けないのかな」
「そうだね…春まで溶けないよ」
「そっか。、転ばないよう気を付けてね」
「ありがと、辰也こそ」
「ああ、そっかオレの方が危ないな」

私は生まれたからずっとここに住んでいるので、雪道を歩くのは慣れている。
もちろん気を付けてはいるけれど、どちらかというと慣れていない辰也のほうが危ないだろう。

「あ、そういえば今年はクリスマスどうしようか」

ふと思い立ったことを辰也に言う。
今年もクリスマスとWCはかぶっているので、クリスマス当日、私たちは東京にいることになる。
去年みたいに少し前にやるか、それとも後にやるか、早めに決めておかないと。

「そうだね…前にやるのもいいけど、あんまり集中できないかな…」
「そっか。じゃあ終わって帰ってきたらやろうね」
「うん」

そう言うと、辰也は笑顔で返事をしてくれる。
辰也と過ごす二度目のクリスマス、すごく楽しみだ。





二度目のクリスマス、とても楽しみなんだけど、問題が一つ。
クリスマスプレゼント、何にしよう。

「うーん…」

期末テスト貯め部活が早めに終了した月曜日、私は一人、ショッピングモールでうんうん唸っていた。
辰也と付き合い始めて一年ちょっと、辰也の好みはわかっているつもりだ。
派手目なものよりシンプルなものを好むとか、色は寒色系が好みだとか。
わかってはいるけれど、やっぱりプレゼントは迷ってしまう。
とびきり喜んでもらえるものをプレゼントしたい。

「あれ、ちん」
「敦」

いろんなお店を回っていると、敦に会った。
敦も買い物だろうか。

ちん、買い物〜?」
「うん。クリスマスプレゼント買いに来たの」
「室ちんに?ラブラブだね〜」
「そ、そう?」
「付き合って一年以上経つでしょ?よく飽きないね」

敦の言葉に、目を丸くしてしまう。
飽きるなんて、そんなわけないだろう。

「飽きないよ、辰也の事飽きるわけないでしょ?」
「まーちんたちはそうかもね。で、何あげるの?」
「それが決まらなくて…」
「どーせ室ちんちんがくれたものならなんでも喜ぶでしょ」

確かに、辰也ならそう言ってくれそうな雰囲気はある。
実際、私も辰也からもらうものならなんだって嬉しいし。
だけれど、誕生日プレゼントを選ぶ時にも思ったけれど、辰也が一番喜ぶものをあげたいのだ。

「室ちんが一番喜ぶものなんて決まってんじゃん」
「?」
ちんがプレゼント〜でいいでしょ。超食いつくよ絶対」
「!敦!」

敦の言葉に、思わず嗜めるような大声を出す。
…前に福井先輩も似たようなことを言っていたし、男子に相談すると絶対この答えが返ってくるんだろうか…。

「えー、絶対喜ぶのに。あ、もうプレゼントじゃなくて既定路線?みたいな?」
「……」
「うわちんこえ〜」

きっと敦をにらみつけると、敦は大袈裟にそう言った。
でも、今のは怒られて当然の発言だろう。

「このままだとちょー怒られそうだから帰るね。ばいばーい」
「…ばいばい」

そう言って去って行く敦の後姿を見送る。
…まあ、確かに「それ」は喜んでくれそうではあるんだけど。
でもそうじゃなくて、ちゃんとした何かを送りたい。

近くのベンチに座って、携帯を取り出した。
写真フォルダを開いて、辰也と取った写真を選ぶ。

こうやって見ると、私は本当に辰也が好きだなあと実感する。

大好きな辰也に、喜んでもらえるプレゼントを用意しよう。





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15.08.14