「わ、雪すごいな」
「本当だ」

家に帰るため、辰也と一緒に辰也の家を出たら、外は雪が降っていた。
来るときはどうにか止んでいたのだけど、こうやって頻繁に降るのも雪国の宿命だ。

「寒い…」

寒いという辰也の傍に寄ってみる。
そうしたら辰也は嬉しそうな顔をした。

はあったかいね」
「そう?」
「うん、あったかい」
「わっ」

辰也はぎゅっと私を抱きしめる。
嬉しそうなその表情を見ると、怒るに怒れない。

「北海道とかってもっと寒いんだろ?信じられないな…」
「そうだね…これからもっと寒くなるからね」
「まあ、去年よりは外に出る機会も減るかな。学校は年明けたらほとんどないし…部活は行くけど」
「…そうだね」

1月になったら3年生は学校に行くことはほとんどなくなる。
何日か登校日があるだけだ。

「もうすぐ卒業なんだね」
「うん…」

私も辰也ももうすぐ卒業だ。
卒業したら、この土地を離れることになる。
18年間暮らしてきたこの場所を。


「ん?」
「オレはの家族の代わりにはなれないけど…オレはずっとの傍にいるよ」

辰也の言葉に目を丸くしてしまう。
辰也は私が寂しがっているのなんてお見通しのようだ。

「うん、ありがとう。辰也がいてくれるなら、大丈夫」

今からこんなに寂しがっていては、いざ一人暮らしを始めたらどうなるのだろうと思うけど、辰也が傍にいてくれるなら大丈夫だと思える。

「ずっと一緒だもんね」
「もちろん」

どんなときでも、辰也は傍にいてくれる。
だから、きっと大丈夫。






「ただいま」
「おかえりなさい」

辰也に家まで送ってもらって、自分の家まで帰ってきた。
台所ではお母さんが夕飯の準備をしているところだ。

「楽しかった?」
「う、うん」

そう聞かれて、思わず顔が赤くなってしまう。
楽しかったのは事実だけど、その、辰也と何をしてきたかというと、それを考えるとお母さんの顔があまり見られない。

「よかったね」
「うん」
「夕飯まで時間あるから、お風呂入っちゃったら?お父さんももうすぐ帰って来る前に」
「!うん」

お母さんの言葉に、背筋をぴんと立てる。
お父さんの顔なんて、もっとちゃんと見られる気がしない。

「じゃ、じゃあお風呂入りまーす!」
「はーい」

そう言って私はいったん自分の部屋へと入った。
頬に触れると、やはり熱い。
お父さんが帰ってきたらちゃんと顔を見ることができるだろうか。





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15.12.06