、可愛いね」
「えっ!?」

部室で部誌を書く私の隣で、辰也がそう囁く。

「可愛いなあ」
「あ、あの、辰也」
「ん?」
「そういうこと言ってくれるのは嬉しいんだけど…」
「?」
「みんながいる前でそういうのは…」

そう、ここは部室。
まだみんながいる部室。

「あ、いたんだ」
「オレらの存在忘れてたのかよ」
「室ちん相変わらず〜」
「いや、悪化してるじゃろ…」
「最近本当ひどいアル。のことしか見てないアル」

部員が口々にそう話す。
本当、前からこういうことを平気でいう人だったけど、最近加速しているような…。

「だってが可愛いからさ」
「な、何もしてないよ。ただ部誌書いてただけ」
「それが可愛いんだよ」
「わっ!?」

辰也は私をぎゅっと抱きしめてくる。

「た、辰也!」
「可愛い」
「だから、みんな見てるから!」

必死に叫ぶと、周りのみんなはため息を吐きはじめる。

「別にいいぜ、なんかオレ慣れてきた」
「わかる〜アレだよね、室ちんとちんがこうやってないと変な感じって言うか」
「完全に日常の風景アル」
「二人が幸せならワシはもう…」

いやいやいや!?

「慣れないで止めてください!」
「オレらが止めたところで氷室の暴走は止まんねーしな」
「そ〜そ〜」
「ほら、みんなそう言ってる」
「わー!」

辰也は極め付けにおでこにキスをしてくる。
な、わ、えええ!?

「だ、ダメだってば!!」
「だって」
「だってじゃなくて!最近教室でもなんかこういうことするし…」
が可愛いから、つい…」
「…とにかくダメ!わかった?」
「……」
「返事は?」
「…じゃあ、せめてどっちか」
「どっちか?」
「教室はダメか、部室はダメか、どっちか」
「えっ!?」

ど、どっちか!?
どっちかって…だってどっちかって…。

部室か、教室か…。


「きょ、教室は、ダメです」
「了解」

辰也にそう言うと、おでこにキスされた。
ああ、もう…どうにでもなれ…。





もバカアル。無茶なこと言ってるのは氷室アルから、どっちもダメって言えばいいアル」
ちんもなんだかんだ室ちんに甘いよね〜」
「結局お似合いのカップルだよなあ」





彼氏バカ
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13.07.26