月曜日。
一番後ろの席からと中山を眺める。
中山が教科書を忘れたようで、机をくっつけての教科書を二人で見ている。

…本当に忘れたんだろうか。
そう邪推したくもなる。
だって授業中にも関わらず、あんな顔でを見つめて。
教科書を見せてもらってるからって、やたらの席に近づくし、今すぐ殴り飛ばしに行きたいぐらいだ。

当のは、ノートを取るのに必死で、まったく気付いていないようだけど。


チャイムが鳴る。
さっさと机の上を片付けての元へ行った。


、ちょっといい?」

中山との会話に割り込んでそう言えば、は立ち上がる。
でも中山がそれを阻もうとする。

は、オレと話してるんだ」

その言葉に心がざわつく。
はオレの恋人だ。お前のじゃない。
の腕を掴んで、強引に教室の外へ連れ出した。



「辰也、どうしたの?何か、大切な話?」

は少し脅えたような顔でそう聞いてくる。
…大切な話だ。

「…!」

強引にキスをすると、は驚いた顔をする。
胸を押されて唇を離すと、は怒った口調で「こういうとこじゃダメだって!」と叫ぶように言う。

「…どうしてダメなの?」

暗い声がでる。
わかってる。
ただ恥ずかしい。学校でこういうことはいしちゃいけない。
そういう思いで言ってるだけだと。

「誰かに見られたら困るの?」

もう一度キスをする。
今度は離さないよ。の力じゃ、オレを引き離せない。

はオレのものだよ。誰にも渡さない。
ほかの誰にも、絶対に。

ずっとずっと不安に思っていたことが溢れ出す。
いつかを誰かにとられるんじゃないか。
オレよりにふさわしい奴が現れるんじゃないか。

…いつか、が、オレ以外の誰かを好きになるんじゃないか。

「…っ」

が肩を震わすのを見て、さすがにキスをやめる。
が息が上がっている。

「…っ、辰也…」

は脅えた顔をする。
何も言わずにこんなことをして、当然だ。

ただ、言えばいいだけなのに。

「中山はのことが好きなんだよ」
「だからあいつとは仲良くしないで」

そう言えばきっとは理解する。
オレがイラつく理由も、すべて。

だけど、言えない。
ただ好きなだけならまだしも、中学からの同級生というのが、オレにとっては重みを持つ。

情けなくて、女々しいことだとはわかってる。
でも、止められない。






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13.11.01