はオレに対して脅えたような顔をすることが多くなった。 当然だ。あんな態度を取っているんだから。 でも、止められない。 にそんな顔をさせたいわけじゃないのに、止められない。 今まで心の奥底にあった不安が、一気に噴き出たようだ。 「……」 目を閉じて、集中する。 もう一度シュートを打って、今日の練習は終わりだ。 * 自主練を終えてが待っている部室へ。 が真剣な顔で話しかけてくる、 「その…最近、怒ってる、よね」 は恐る恐る、オレの顔色を窺うように言う。 「怒ってる時って、いつも、中山がいたでしょ」 そう言われて目を丸くする。 …がそう気付いているとは思わなかった。 「ねえ、前も言ったけど、別になにもないよ。本当、中学一緒ってだけで…」 知ってる。知ってるよ。 が好きなのはオレだけだって。 でも、そうじゃないんだよ。 「…じゃあ、もうあいつとは喋らないで」 「え?」 「近付くのもダメだ」 「そ、それは無理だよ」 それはそうだ。 隣の席で、週番もやっていて、…友達だ。 わかっているのに、納得できない。止められない。 「…オレとあいつ、どっちが大事なの?」 「え?」 の髪を撫でる。 いつもと手つきが違うのを感じたのか、は脅えた顔をする。 「辰也、あの」 「…」 「!」 ににじり寄る。 一歩、また一歩繰り返せば、狭い部室、の後ろはもう壁だ。 「…っ」 脅えたままのにキスをする。 深く口づければ、少し頬が赤くなる。 ねえ、。 のこんな顔を知っているのは、オレだけだろ? 「…た、辰也」 の首筋にキスをする。 もっと、オレにしか見せない顔を。 の全部を、オレのモノに 「やだ…っ」 初めて聞くの声にハッとして、の顔を見る。 泣いている。 「…」 血の気が引く。 オレは今、何を 「辰也のバカ!」 はオレを突き飛ばして、部室を走って出て行った。 オレはしばらくその場に立ち尽くしていた。 ← top → 13.11.01 |