はオレに対して脅えたような顔をすることが多くなった。
当然だ。あんな態度を取っているんだから。

でも、止められない。
にそんな顔をさせたいわけじゃないのに、止められない。
今まで心の奥底にあった不安が、一気に噴き出たようだ。

「……」

目を閉じて、集中する。
もう一度シュートを打って、今日の練習は終わりだ。



自主練を終えてが待っている部室へ。
が真剣な顔で話しかけてくる、

「その…最近、怒ってる、よね」

は恐る恐る、オレの顔色を窺うように言う。

「怒ってる時って、いつも、中山がいたでしょ」

そう言われて目を丸くする。
がそう気付いているとは思わなかった。

「ねえ、前も言ったけど、別になにもないよ。本当、中学一緒ってだけで…」

知ってる。知ってるよ。
が好きなのはオレだけだって。

でも、そうじゃないんだよ。

「…じゃあ、もうあいつとは喋らないで」
「え?」
「近付くのもダメだ」
「そ、それは無理だよ」

それはそうだ。
隣の席で、週番もやっていて、…友達だ。

わかっているのに、納得できない。止められない。

「…オレとあいつ、どっちが大事なの?」
「え?」

の髪を撫でる。
いつもと手つきが違うのを感じたのか、は脅えた顔をする。

「辰也、あの」
「…」
「!」

ににじり寄る。
一歩、また一歩繰り返せば、狭い部室、の後ろはもう壁だ。

「…っ」

脅えたままのにキスをする。
深く口づければ、少し頬が赤くなる。

ねえ、
のこんな顔を知っているのは、オレだけだろ?

「…た、辰也」

の首筋にキスをする。
もっと、オレにしか見せない顔を。
の全部を、オレのモノに



「やだ…っ」

初めて聞くの声にハッとして、の顔を見る。
泣いている。

「…

血の気が引く。
オレは今、何を

「辰也のバカ!」

はオレを突き飛ばして、部室を走って出て行った。
オレはしばらくその場に立ち尽くしていた。











 top 
13.11.01