今日は食堂を貸してもらってミーティングだ。

いや、ミーティング…というか、勉強会。
普段勉強の時間なんてなかなか取れないバスケ部員たち。
期末テストまであと少し、それに備えて勉強しようと言うわけだ。

とりあえず、みんなの中間テスト結果大公開。

「…じゃあ、ジャブでから」
「えっ!?」
「どうせそんな悪くねーだろ」

福井先輩からいきなりのご指名。
確かに人に見せられない点数じゃないけど、いきなりは緊張する…。

「こ、これです」
「…ふつーだな」
「え、いいアルよ」
「ああ、そういう意味じゃなくて。予想を裏切らねーなって。、真面目な優等生って感じじゃん」

私のテストをじろじろ見る部員たち。
…すごく、恥ずかしいんですけど。

「み、みなさんは」
「ああ。…オレ、敦の心配なんだけど」

福井先輩はじっと敦を見つめる。
…確かに。

赤点取ったとか、WC行けないとか、そんな話は聞いたことないから、そこまで悪くない…んだよね?

「オレはねえ、こんな感じ」

そう言って敦は返された期末テストを取り出す。

「……」
「ちょっとー、みんな何その顔」
「…敦、頭いいんだね」

敦手のテストの点数は、いい。
「意外と」いいのではなく、純粋にいい。

「…意外」
ちん、それ超失礼」
「あ、ごめん」
「よく言われるけどね〜」

敦は唇を尖らせてそう言う。
…やっぱり、よく言われるのか。

一人一人見てたら時間がかかる、ということでもう一気に見せ合うことに。

「室ちん、頭悪いんだね」
「ひどいな」
「どれどれ…って古典か」
「ずっとアメリカいたんだよ。むしろいい方だよ」
ちん、オレのときと態度違う」
「え」

敦にそう言われて固まる。
べ、別にそんなことは…。

「確かにそれ考えればいい方だよなあ」
が教えてくれましたから」
ちん教えるのうまいの?オレにも教えてよ〜」
「ダメだよ」

敦の言葉を、辰也がバッサリ斬る。

「えー。ちょっと室ちんヤキモチやきすぎじゃなーい?ちん窮屈でしょ」
「え、そんなこと…」
「ないの?」
「別に…」
「はー…ただのバカップルじゃん」

敦は呆れたように溜め息を吐いた。
…ば、バカップル?

「勉強会も室ちんとちんは二人だけでやればよくない?」
「そう?なら遠慮なく」
「いやいやいや!」

辰也は嬉しそうな声を出すけど、ダメだ。
みんなでやるんだから!





「ねえねえ、この英文どういう意味?」
「ああ、それはな」

「日本史とか意味わからないアル。何かいい覚え方ないアルか」
「ワシが去年使ったまとめノートあるぞ。使うか?」
「なんかゴリラ臭そうアル」
「ひどい!」

最初は雑談で終わるんじゃ…と思ったけど、意外とみんなちゃんと勉強している。
特に岡村先輩と福井先輩、主将副主将やってるだけあって、面倒見がいい。

「ねえ、
「うん」
「この文、全然わからないんだけど…」

そう言って辰也は古典の教科書を見せてくる。
文章を見て、辰也に一つ一つ教えていく。

「これはね、まずここから…」
「うん」

辰也のおかげで古典は得意科目になった。
辰也に教えないと、と思ってたくさん勉強してきたから。

「ああ、なるほど」
「わかった?」
「うん、ありがとう」

辰也はそう言うと私の髪を撫でる。
くすぐったい。

は教えるのうまいね」
「そう?」
「うん。いつも助かってるよ」

辰也は私を抱き寄せる。
わ。

「…お前ら」
「わ、福井先輩」
「イチャつくなら外でやれよ」

ポッと顔が赤くなる。

「そ、外でって…」
「大したことしてませんけど」
「いやなんか、いつもは慣れてっけど勉強してる横でやられるとムカつく」
「え〜でも二人だけにしちゃったらやばくない?」

敦が横から出てくる。
やばいって、何が。

「二人きりにしちゃったら、絶対違う勉強しだすよ」
「な…っ」

違う勉強って。そ、それって…!

「あー確かに」
「でしょ〜?室ちんがいろいろ教えるんだよ。やらし〜」
「手取り足取り腰取り?」
「ちょっとちょっと〜保健の実技はテストにないから〜」

俯いたまま、両手で思いっきり机を叩いた。
好き勝手言ってた二人は黙り込む。

「……」
「お、おい、?」
ちん、なんか怖い」
「…二人とも、好き勝手言ってますけど」

自分でも驚くぐらい低い声が出る。

「…ずいぶん、楽しそうですね」





「お前ら、ちゃんとやってるか?」

30分くらい経ったとき、監督が食堂に入ってくる。

「…あれ」

監督は入口に一番近い席に座っている私のところまでやってくる。

、なんで紫原と福井は正座で勉強してるんだ?」

食堂の奥で、福井先輩と敦が床に正座したまま勉強している。

「知りません!」

そう言い放つと、辰也が隣で少し笑ったのが見えた。
辰也をきっと睨むと、笑顔を少し気まずそうな表情に変えた。

「ねえちん。足痛い」
「……」
「お菓子あげるから許してよ〜」
「知らない!バカ!」

二人はその後足が痺れて中々帰れなかったとか。
もう、知らない!








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13.11.22