「お疲れ様ー」
「お疲れー」

一月はじめ。
まだ正月呆けも抜け切らぬうちにバスケ部の練習は始まった。

「辰也、今日はもう帰る?」
「うん。まだ体動いてないし」

確かに、ほかのみんなもそう言って今日は早めに切り上げている。
…バスケ部は大変だなあ。
まだ周りはお正月休みだというのに、こうやって練習を始めて。
さすがに今日は早めに終わったけど。

…みんな、怪我なく過ごせますように。
初詣にお願いしたことをもう一度心の中で唱える。
こんなに頑張っている彼ら。
勝ち負けは勝負だし祈ることじゃないかなと思うけど、怪我は運もあったりするし、お願いしなきゃ。

「じゃ、帰ろうか」
「うん」

帰る準備をして、辰也を手をつないで校門をくぐる。
相変わらず寒いなあ。
早く春にならないかなと思いつつ、辰也と話をする。

「やっぱり慣れないね、先輩たちがいないの」
「うん。体育館、広く感じるな」
「春休みに入ったら推薦の新入生くるみたいだし、それまで辛抱かなあ」
「春か…もマネージャー勧誘しないとね」
「あ、そっか…」

私が引退したらマネージャーいなくなっちゃうから、次の新入生で勧誘しないとまずいんだ…。

「…」
?」
「ふふ」

辰也に一歩近づく。
前は新しくマネージャーきたらどうしようとか、妬いちゃうとか、そんなことを思っていたけど、今は大丈夫。
辰也は私を好きでいてくれている。
だから、大丈夫。
自信を持って、そう思えるよ。

「辰也、大好きだよ」

そう言うと、辰也は笑って私を抱き寄せる。

「オレもだよ」

耳元で囁かれて、体が跳ねる。
ドキドキする。
辰也が好き。大好き。
そう、感じる。

「…ね、人いないし、いい?」

辰也は顔を近づけてそう言う。
いつもは断りなしにいきなりキスしてくるくせに、こういうときばっかり聞いてくる。

「…い、いいよ」

そう言うと、辰也は優しくキスしてくる。
本当に、この人が、好き。

好きだと思う。
ずっとずっと、一緒にいたいと思うよ。





「もう着いちゃったね」
「うん…」

私の家の前。
毎回思う。
一緒にいる時間は、どうしてこんなに短いんだろう。

「ん…っ」
「…つけてくれてるんだ」

辰也は私のペンダントを触る。
くすぐったい。

「いつもつけてるよ」
「うれしいな」
「大切だもん」

そう言って辰也に抱きつく。
胸が苦しい。
離れたくない。

いつもそう思ってる。
でも、なんでだろう。
最近は、より強く感じるよ。


「…ん」

辰也に頭を撫でられて、体を離す。
寂しい。

「…また、明日」
「あ…」

歩き出す辰也の袖を掴む。
辰也、

?」
「あ、あの…」

離れたくない。一緒にいたい。
一秒でも、長く。

「あのね、今日、家族みんな親戚の家行ってて、明日の夕方まで帰ってこなくて…」


お正月だから、今日からみんな親戚の家まで行っている。
私だけ、部活があるからと残った。
今晩、家には私だけ。

「あの、だからね」

私、今、きっととんでもないことを言っている。
でも、止められない。

「帰らないで…」

声が震える。
一緒にいたい。
少しでも、長く。

ずっと、一緒に。




辰也がぎゅっと私を抱きしめる。

「いる。帰らないよ」
「辰也」
「そんなこと言われて、帰れるわけ、ない」

私も辰也を抱きしめ返す。
一緒にいたい。あと少し、もう少し。

辰也と、一緒にいたい。









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14.02.28