ミーティングだけで終わった部活。
今日は辰也の部屋でのんびりすることになった。

、何か飲む?」
「紅茶いい?」
「うん、待ってて」

今日は一緒に映画を見ようという話をしている。
今回借りて来たのは、辰也が見たいと言っていたアクション映画だ。
楽しみだなあ。

「はい、お待たせ」
「あ、ありがとう、氷室…」

あ、と思ってももう遅い。
辰也はずい、と私に詰め寄る。

「…今なんて言った?」
「え、えー…」

「…ごめんなさい…」

違う、わざとじゃないんだ。
わざと苗字で呼ぼうなんて思うわけがない。
ただ、ずっと「氷室」って呼んでたから、つい…。

「あ、あの、つい癖で…そう呼びたいとか、そういうわけじゃないよ」
「ふうん?」
「た、辰也、あの」
「許さないって言っただろう?」

辰也はそう言ってキスをする。
これは、まずい。

「た、辰也、映画…」
「今度見ようか」
「でも」

「!」

辰也に冷たい声でそう呼ばれて、嫌な気持ちになる。
…そう、すごく、嫌な気持ちだ。

「…ごめんなさい」
「ダメだよ」
「…」

辰也の呼ぶ「」が、本当に嫌で、辰也もこんな気持ちだったと思うと、申し訳ない気持ちになる。

「わっ!」

ひょいと抱き上げられて、ベッドに寝かされる。
辰也の顔は心なしか楽しそうだ。

「二度と呼べないようにしようか」
「ひゃ…っ」

太ももを撫で上げられると、変な声が出る。
その様子を見て、辰也はもう一度太ももからふくらはぎを優しく撫でる。

「…っ」
「こんなところ、気持ちいいんだ」
「ちが…っ」

こんなところ、普段は触ってもくすぐったいだけなのに、辰也に触れられるとゾクゾクしてしまう。

「…っ」
、声出して」
「あ、や…っ」

辰也はあっと言う間に私の上着を全部脱がしてしまう。
一気に顔が赤くなるのを感じて、思わず両手で胸を隠した。

「隠しちゃダメだって」
「あ、だって…」

辰也とこういうことをするのは誕生日以来、二度目なんだけど。
一回したからって恥ずかしさがなくなるわけじゃない。
嬌声を聞かれるのも、肌を見られるのも、こういうことをすることも、全然慣れないし、恥ずかしい。

「恥ずかしいの?」
「うん…」

素直に頷くと、辰也は私の頭を撫でた。
優しい感触に安心していると、辰也の手が私の腕を掴んだ。

「あっ!やだ…っ」

辰也は強引に胸を隠していた私の腕をどかすと、その腕を私の頭上でひとまとめにして、左手でそれを固定する。

「や、やだ…」
「こんなにしてるくせに」
「あっ…」

辰也は右手で、すでに立ち上がってしまった私の胸の先端を弾く。
それだけで体が跳ねて、声が出てしまう。

「た、辰也、お願い、離して」
「……」
「もう、隠したりしないから…」

顔を真っ赤にしてそう言うと、辰也は少し考えるような顔をする。

「次やったら、もうダメだよ」

辰也はそう言って手を離してくれる。
ホッとするけど、恥ずかしいことには何も変わらないことに気づいて、また赤くなる。


「…っ」
「顔が真っ赤だ」

辰也は私の頬にキスをする。
そのまま唇が移動して、私の首筋と鎖骨の辺りに痕を残していく。

「可愛いね」
「あっ…」

辰也の唇は私の胸にたどり着いて、先端を吸い上げる。
心臓が爆発しそうだ。

「…っ、た、辰也…っ」

この間より緊張しないでいられるかも、なんて思ったけど、結局そんなことはなかった。
寧ろ、この間よりいっぱいいっぱいじゃない分、余計にドキドキしているような…。

、深呼吸」
「え?」
「緊張しすぎ」
「だ、だって…」

一回したくらいじゃ慣れるわけがない。
肌を見せることも、触れられることも、緊張してしまって仕方ない。

「赤くなった顔も、可愛いけどね」
「…っ」

辰也は唇にキスをすると、もう一度太ももを撫でる。
そこを触られるのは、どうにもダメだ。

「あっ…辰也…」

今度は指と手のひらだけじゃなく、舌で私の足を舐めまわす。
こんなところでゾクゾクするなんて、私の体はおかしくなってしまったんだろうか。

「ひゃ…っ」
「ここにつけるの、いいね。オレしか見えない」

辰也はそう言って太ももの内側を強く吸う。
私からは見えないけど、多分、赤い痕が付いているんだろう。

「ここも、もうぐしょぐしょだ」
「あっ!」

下着の上から秘部をなぞられる。
すっかり濡れてしまったソコを覗かれると、顔が真っ赤になってしまう。

「…っ」
「ダメだって」

両手で顔を覆うと、辰也はその手を掴んだ。

「顔も隠しちゃダメだ」
「だ、だって」
「真っ赤な可愛い顔が、見れないだろ?」

そんなことを言われると、余計に赤くなる。
ただでさえ真っ赤なのに、これ以上赤くなったら、本当に火が出ちゃうんじゃないか。

「…あっ!」

下着の中に辰也の指が侵入してくる。
表面を何度かなぞった後、辰也の指が私の中に入った。

「あっ、た、辰也…っ」
「すごいね、ここ。こんなに締め付けてくる」
「や、やだ…、言わないで…っ」

辰也の指が私の中を刺激する。
頭の中が快感と辰也のことだけになっていく。

「あ、あっ、ダメ…ああっ!」
「ダメなの?こんなに気持ちよさそうなのに」

辰也は意地悪な笑みを浮かべる。
辰也は普段も時々意地悪だけど、こういうときはより一層。
私はいつも、ただ顔を赤くするだけだ。

「あ、あっ…あんまり、動かしたら…っ」
「気持ちいい?」
「あっ、ちが…」
「ふうん?」
「あ、や、やだ…!」

辰也は意地の悪い声を出して、私の中から指を抜いてしまう。
思わず、それに対して「嫌」と言ってしまった。

「あれ、嫌なの?」
「ち、ちが」
「してほしいんだろ?」

首を振ってみても、もう遅い。
辰也はもう使い物にならなくなった下着をはぎ取った。

「…っ!」
「もう真っ赤だ」
「み、見ちゃやだ…っ」
「オレは見たいんだよ」

辰也は私の足をぐっと開いて覗き込む。
辰也はいつも、私のことを舐めるように見つめてくる。
それが恥ずかしくてたまらないのに、感じてしまう。

「あっ、や…」

辰也は覗き込んだまま、再び私の中に指を入れる。
辰也の指が動く度に、いやらしい水音が響きわたって、聴覚まで犯されているようだ。

「あっ、あ、…やあっ!」
「……」
「あっ!?や、そこ、ああ…っ!」

指が私の中に入ったまま、辰也の舌が私の隠核を刺激する。
強すぎる刺激に、腰を浮かせて逃げようとするけど、辰也の左手が私の腰を掴んでそれを阻止する。

「どこ行く気?」
「あ、ダメ、そこ、あ!やあ…っ!」
「逃がさないよ」

辰也はそこを舌で転がしたり、強く吸いついたり。
一方指は中の奥の方を刺激する。
シーツを掴んで快感に耐えようとするけど、耐えられるはずもない。

「あ、あっ、やあ…っ!も、無理…っ」

快感が強すぎて、苦しいくらい。
だけど辰也はやめない。
それどころか、どんどん激しくなっていく。

「あ、ああっ、あ、も…っ」
「ダメだよ」
「ひゃっ!?」

辰也はそう言うと秘部から指を抜いて口を離す。
突然なくなった刺激、そこが疼いてしまう。

「一人でイっちゃダメだよ」
「あ…」

辰也はズボンと下着を脱ぎ捨てると、枕元から避妊具を取り出す。
ソレを秘部にあてがわれて、頭がくらくらしてきた。

はやく、

「あっ…氷室…」

ボーっとした頭でそう呟いて、ハッとした。
今、私、


「あ、ちが」
「何が?」
「あっ!」

辰也は自身で私の秘部の表面を刺激する。
緩く動かれると、もどかしい。

「た、辰也…っ」
「許さないって、言っただろ?」
「あ、やあ…っ」

その動きがもどかしくて、思わず辰也の腕を掴んだ。

「辰也、これやあ…っ」
「どうして?」
「だって、あっ…」
「ここ、すごくひくついてる」
「や、だ…」
「こっちはこんなに濡らして、欲しいって言ってるよ」
「や、やだ、言わないで…っ」

恥ずかしくて辰也から顔を背けると、辰也は私の顎を掴んで目線を合わさせた。

「言わなきゃわからないよ」
「…っ」

辰也の鋭い視線に、目が離せなくなる。

「どうしてほしいの?」
「あ、の…」
「ん?」

羞恥を堪えて、言葉を絞り出そうとするけど、でも、ダメだ。
涙が一筋流れた。


「や、やだ、やっぱり無理…」
「じゃあ、このままだ」
「…意地悪…っ」
「先にひどいこと言ったのはだろう?」

辰也は冷たい声で、私の名前を呼ぶ。


「…!」
「ほら、早く」
「ひゃ…」

辰也が少しだけ侵入してくる。
これがもっと、欲しい。



さっき「」と呼ばれた時とはまるで違う、甘い声。
そんな声で名前を呼ばれて、ついに思考が溶けた。

「辰也、私…」
「ん?」
「…欲しいの、辰也が…っ、挿れて、ほしい…っ」

羞恥でギュッと目を瞑ると、また涙が流れる。
辰也はその涙が舐めとった。


「あっ、ああ…っ!」

辰也が私の中に入ってくる。
待ち望んだ快感に、体が震える。

「あ、辰也…っ」
、もう一回、呼んで」
「んっ、ああっ、辰也…っ」

辰也は激しく動きながら、唇にキスをする。
気持ち良くて、ぞくぞくする。

「辰也、あっ、ああ!」
、もう一回」
「辰也、辰也…っ!」

辰也の首に手を回して、辰也の名前を必死に呼んだ。
一番好きな人の名前。大好きな人の名前。
そう呼びたいの。名前を呼びたいんだよ。

「あっ、辰也、ごめん、ね…っ」
…?」
「違うの、呼びたいの…、あっ、名前、呼びたいけど、んっ、ずっと、呼んでたから…、ああっ!」

辰也のソレと私の秘部が擦れる度に気持ちよくなる。
辰也が私の感じる場所を突いたとき、より一層高い声が上がった。

「あっ!ああっ、や、あっ!」
、もう一回呼んで」
「あ、た、辰也、ああ…っ!」
、好きだよ…」
「あっ、わ、私も…」

甘い声で名前を呼ばれて、頭の中が真っ白になる。
辰也をぎゅっと抱きしめた。

「あ、あっ、も、ダメ…っ」
…っ」

抱きしめあって、私たちは同時に達した。






「……」
「ねえ、

情事の後、二人でベッドに横になるけど、私はそっぽを向いている。


「……」
「怒ってるの?」

…怒ってると言うか…。

「た、辰也、意地悪なんだもん」
「……」
「だからその、恥ずかしいっていうか…」
が可愛いから、つい」
「ま、またそう言うこと!」
「だって本当なんだよ」

辰也は後ろから私を抱きしめて、そう言った。

「一応抑えようとしてるんだけど、が可愛いから…」
「…、可愛いから、って」
「その顔」

辰也は無理矢理私を自分の方に向かせると、ちゅ、と音を立ててキスをする。

のその顔が可愛くて、もっと見たくなる」
「…っ」
「可愛いよ」

辰也はもう一度キスをする。
私の顔はもうゆでだこみたいになってるだろう。

「好きだよ」
「う、うん…」
は?」
「…好き、だよ」
の全部が好きだよ」
「…私も」

辰也は私の髪を撫でながら甘い声で囁く。
さっきとは違う意味で頬が紅潮する。
ドキドキする。心が満たされていくのを感じる。

「意地悪なところも?」
「え?」
「だって今、『全部』って言っただろう?」
「い、言ってない!」
「言ったよ」
「…っ、言ったけど、そうじゃないの!」

辰也の胸を押してそう反論するけど、辰也は楽しそうに笑うだけだ。

「オレもの全部が好きだよ」
「だ、だからっ!」

「…っ、ひむ」

そこまで言って、ハッとする。
い、今、私、

「…
「い、言ってない!言ってないからね!?」
「あれだけ言ってもまだ呼ぶなんて」
「だから、違うってば!」
「もしかして、してほしいの?」

辰也は私の上に覆いかぶさる格好になる。
ちがう、違うってば…!

「逃がさないよ?」

辰也は薄い笑みを浮かべてそう言う。
結局映画は見られませんでした。






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13.07.19

名前の呼び方はなかなか変えられませんよねというお話



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