…」

名前を呼ばれて、目を開ける。
そこには、辰也がいる。

「…んん…」
「ごめん、起こした?」
「ん…だいじょうぶ」

そう言いながら、目をこすって重い瞼をあけて辰也に抱きつく。
最近あまり眠れなかったせいか、眠くて仕方ない。
だけど、もういい時間だ。

「もう、こんな時間だし…そろそろ帰らないと」
「あ、そっか…」
「うん…」

でも、帰りたくない。
ずっと、このままいられたら。
そんなことを思って、辰也を抱きしめる手を強めた。


「…」
「ふふ」

辰也はそんな私の様子を見て笑う。
…辰也も、同じことを思ってくれているよね。

「辰也、私ね」
「ん?」
「今ね、すごーく、幸せ」
「…うん」
「さっきまでね、辰也が少し遠くて…寂しかったの。だけど、今はすごく近くにいて…」

「辰也の側にいられて、辰也に好きでいてもらえて…すごく、すごく幸せ」

まだうまく回らない頭で、感じたことをそのまま話す。
今、すごく満たされているなと感じる。

「オレもだよ」
「うん」
に好きになってもらえて、と一緒にいられて、すごく幸せだ」
「ふふ」


辰也も幸せそうに笑ってくれる。
本当に、ずっと、このまま…。

「…ずっと」
「ん?」
「ずっとこうしてたいの」
「…うん」
「起きたら辰也がいて、寝る前にもね、辰也がいるの」
「うん」
「また目を覚ましたら、辰也がいて…そんな毎日が、ずっと続いていったら、きっと、幸せだよ」

さっき起きたとき、目の前に辰也がいて嬉しくて。
それが続いていったら、きっと、もっと幸せだ。

「うん、。オレもね、が好きだよ。大切にしたい。のことを、幸せにしたいよ」
「うん」
「…でも、幸せにしたいけど、きっと今回みたいに、のことをたくさん泣かせたり、恐がらせたり、たくさんするよ」
「辰也」

辰也は表情を変えずにそう話す。
不安になって名前を呼ぶと、辰也は私の口を抑えた。

「聞いて」
「…」
「オレよりのことを幸せにできるやつがきっといる」
「……」
「それでも、オレは、のことを離したくないよ」

そう言われて、私は思わずもう一度辰也に抱きついた。

「いないよ、そんな人、いない」

「もしいても、いらないよ。私は、辰也がいい」

辰也以上に、私のこと幸せにしてくれる人なんていない。
もし、もしもそんな人がいても、いらない。

辰也がいいの。辰也じゃなきゃ、嫌だよ。
辰也といたらきっと幸せになれる。なれるけど。
辰也といることで悲しいことやつらいことがたくさんあっても、それでも、私は、辰也がいいの。

「オレも、がいいよ」
「うん」
以外、いらない」

今度は辰也が私をぎゅっと抱きしめ返す。
ねえ、辰也も、同じ気持ちでしょ?

「大好きだよ」
「私も」
「何回言っても、足りないくらいだ」
「うん」
「…
「?」
「こんなに好きなのは、オレだけかと思ってた」
「…私も」
「うん」
「私も、こんなに好きなの、私だけだと思ってた」

いつも私ばかり赤くなって、慌てて、照れて、振り回されて。
私ばっかり好きなのかと、思うこともあったけど。

「…そっか」
「うん。でも、違うんだよね」
「そうだよ」
「好き、大好きなの」
「オレもだよ」
「ふふ」

そうじゃないよね。
辰也も私のこと。すごく、たくさん、好きでいてくれている。

思えば辰也はいつもどこか自信がなくて。
今回のことも、私じゃなくて、自分のことを信じられなかったんだろう。
だから、私が教えるよ。
辰也がすごく素敵な人だって、こんなに私は辰也のことが好きだよって。
ずっとずっと一緒にいて、辰也から離れないって、証明するよ。








 
13.10.11