「……」

部室で辰也を待つ間、WCのトーナメント表を見る。
うちはシード校だから、一回戦はなし。

「……準々決勝か…」

トーナメント表をなぞって確認する。
誠凛と戦うのは準々決勝。

辰也の話していた、大我くんのいる誠凛だ。

、お待たせ」
「辰也」

辰也が自主練を終えて部室に入ってくる。
最近、辰也はずいぶん遅くまで練習している。
きっと、もうすぐWCだからだろう。

そう、WCだ。

「今日は長かったね」
「ああ。ごめん、待たせて」
「それはいいんだけど、あんまり無理したらダメだよ。WC前にケガしたら大変」
「うん、でも」

辰也は机の上のトーナメント表を手に取った。

「…もうすぐ戦える」

辰也は小さな声で呟いた。
きっと、辰也が言うのは、

「辰也」
「ずっと待ってたんだよ」

辰也は椅子に座ってトーナメント表を見つめる。
なんだか心臓が、痛い。

「…辰也」

思わず辰也の手を握る。
…辰也が言うのは、きっと大我くんのことだ。
今まで聞いてきた、辰也のいろんな想い。



辰也は私の肩に頭を乗せる。
そのまま目を瞑って、話し出す。

「頑張るよ」
「うん」
「…応援してね」
「…うん」
「…が」

細い声。
消えそうな声だ。

「…がいれば、オレは頑張れるよ」
「…うん」

なんて声をかければいいかわからない。
「頑張って」も「負けないで」も何か違うような気がする。

…辰也の思いは、私にはわからない。
きっと、辰也の悩みは、辰也自身で乗り越えなくちゃいけないことだから。

「…辰也」

辰也をぎゅっと抱きしめる。
何を言えば、いいんだろう。

「辰也、あのね」
「……」
「…えっと、私…」

言い淀んでいると、辰也が私の頭を撫でる。

「わかるよ、
「辰也」
「ありがとう」
「……うん」

辰也をぎゅっと抱きしめる。
少しでも、気持ちが伝わっているんだろうか。

「あのね」
「…うん」

目を瞑る。
ゆっくり頭を整理する。

「…私、ずっとそばにいるよ」

そうだ、これが、言いたかった。
辰也がどんな答えを出したとしても、私は、ずっと辰也のそばにいるよ。


「いつでも、隣にいるから」
「うん」
「だから、いつでも寄りかかってね」

辰也は私をぎゅっと抱きしめる。
苦しいくらいに。



WCは、もうすぐそこまで来ている。








 
13.12.20