「それでね、今日は…」

今日もまた、部室で氷室に彼のことを相談している。
一時は不安になったりもしたけど、最近は前より距離が近付いたような気がする。

「今度CD貸してくれるって!」

そう言うと、氷室は少し眉を下げた。

「そっか。よかったね」

…?

「…氷室?」
「ん?」
「なんか、元気なくない?」
「…そんなことないよ」

今、少し様子がおかしかった気がしたけど、気のせい…?

「そう?ならいいけど…」
「…

氷室が私の隣に座った。
真剣な表情だ。

「…氷室?」
「……」
「…っ!」

氷室が私の肩を抱く。
…っ!?

「ひ、氷室…」
「ねえ、知ってる?みんな帰った。誰もここには来ない」

確かに、今は誰もいない。
みんな自主練を終えて、部室に入ってくる人なんていないだろう。
でも、まさか。

「…っ」
「油断しすぎだ」
「…!」

身体を震わせる。
まさか、氷室が、そんなことをするはずはない。
そうだよ、だって、氷室が、



恐怖で目を瞑った。
氷室、

「…痛っ!」

おでこにじんじんとした痛み。
…え?

「え、え…?」
「言っただろ、油断しすぎだって」
「え…」

いつの間にか氷室は私から離れている。
おでこ、痛い。

「あんまり男と二人きりになるなってこと。何されるか、わからないよ?」
「あ、はい…」

…私、今、何を

「え、あ!」

そ、そうだ…!

「ご、ごめんなさい…」
「…いいよ。じゃあ、オレは帰るから」
「う、うん」

氷室はそう言って部室を出た。
わ、私のバカ…!

そりゃそうだ。氷室は男の人だ。
あんまり気軽に二人きりになったりは、よくない、よね。
氷室に言われるまで気付かなかった…。

「……」

氷室に抱かれた肩。
…ドキドキする。

…当たり前だ。あんなことされたの、初めてだから。
ドキドキするのは、初めてだからだよ。










消えない温もり
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14.04.08