「それでね、今日は…」

今日もまた、部室での話を聞いている。
一時落ち込んだりもしていたけど、最近、とあいつは仲がいいみたいだ。
よく話しているし、あいつのほうもまんざらではなさそうだ。
も距離が近付いているのが感じてるんだろう。
最近は相談と言うより、惚気に近い。

「今度CD貸してくれるって!」
「そっか。よかったね」

は嬉しそうに報告してくる。
『よかったね』『おめでとう』
感情なんて何一つこもっていない。機械のように言葉を紡ぐ。

「…氷室?」
「ん?」
「なんか、元気なくない?」

図星を突かれる。
…オレの気持ちには気付かないのに、元気がないのはわかるのか。

「…そんなことないよ」
「そう?ならいいけど…」
「…

の隣に座る。
ダメだ、限界だ。

「…氷室?」
「……」
「…っ!」

の肩を抱く。
は脅えた顔をした。

「ひ、氷室…」
「ねえ、知ってる?みんな帰った。誰もここには来ない」
「…っ」
「油断しすぎだ」
「…!」

はぎゅっと目を瞑った。

「…痛っ!」

のおでこに、デコピンをした。
は、ぽかんと口を開けている。

「え、え…?」
「言っただろ、油断しすぎだって」
「え、あ」
「あんまり男と二人きりになるなってこと。何されるか、わからないよ?」
「あ、はい…」

はまだ放心してる。
…まったく。

「え、あ!」

少しした後、理解したのか、顔を真っ赤にした。

「ご、ごめんなさい…」
「…いいよ。じゃあ、オレは帰るから」
「う、うん」

赤い顔のを残して部室を出た。

「……」

の肩を抱いた手を見つめる。
感触が、消えない。

『何れされるか、わからないよ?』

あれは自分に言った言葉だ。
何するかわからない。
最近は特にそうだ。
いつか、を無理矢理犯して、自分のものにしようとするんじゃないかと。
そう思う時がある。
そんなことをしたいわけじゃない。
だけど、理性が言うことを聞くかなんてわからない。

だから、予防線だ。
無防備に近付いてくるなと。
何をするかわからない。自分が怖い。

本当に、オレは臆病だ。










スキを見せたら奪うから
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14.04.08