あれから一週間。 氷室とは、ほとんど話していない。 『…もしもし』 「もしもし、私、だけど」 夜、氷室に電話を掛けた。 話を聞いてほしい。 『?』 「で、電話ならいいでしょ。すぐ終わるし」 『…うん』 深呼吸をする。 氷室の声を聞いて、心を弾ませている自分に気付く。 最近はあの彼と話しても、普通に楽しいだけ。 だけど、氷室と話す今はこんなにも心が躍る。 私、いつの間にこんなに…。 「あのね、私、明日、告白する」 『!』 「…今までたくさん話聞いてもらったから、氷室には言わないとって思って」 『…そう』 「…うん」 『…頑張って』 「うん」 そう言って電話を切った。 これで、もう逃げ道はない。 ちゃんと言わないといけない。 「……」 うまくいかないだろうということはわかってる。 いくはずがない。 今まで私の話を聞いてくれていた人なんだから。 他に好きな人がいるんだから。 でも、伝えなくちゃと思った。 この気持ちを、ちゃんと。 * 部活が終わった後のこと。 今日もゆっくり部誌を書く。 いつも通り、氷室は一番遅くまで残って自主練だ。 「…ふう」 息を吐く。 自分でも驚くけど、あまり緊張していない。 …結果がわかっているからかな。 「…?まだ残ってたのか」 「あ、氷室」 氷室が帰って来る。 …よし、言わなきゃ。 「あのね、氷室」 「…もう、告白したの?」 「ううん、これから」 「…?」 氷室は不思議そうな顔をする。 彼はもう帰った。 残っているのは、私と氷室だけしかいない。 「?」 「…あの、ね。私」 氷室の前に立つ。 心臓の鼓動は落ち着いてる。 氷室の顔を真っ直ぐ見る。 「…私、氷室が好き」 初めて口にした言葉。 「氷室が好き」 そう、好き。いつの間にか、こんなにも、氷室を好きになっていた。 氷室が、好き。 「」 「…ごめんね、急にこんな」 「…」 氷室は悲しそうな声を出すと、私をぎゅっと抱きしめた。 「ひ、氷室…?」 「、オレも」 「氷室、あの」 「オレもが、好きだよ」 氷室の言葉に、体を硬直させる。 氷室が私を、好き? 「う、うそ」 「」 「だって、氷室」 「好きだよ、が好きだ」 氷室は今まで見たことのないような、熱い表情でそう言う。 気付けば私の頬には涙が伝っていた。 「氷室、私」 「好きだよ」 「…っ」 噛みつくように唇を奪われる。 何度も、何度も。 「…んっ」 「好きだよ」 私が言葉を紡ぐ隙も与えず、氷室はキスを繰り返す。 苦しいけど、嫌じゃない。 …ううん、違う。 嬉しいんだ。 「氷室…」 「」 少しの間、見つめ合う。 氷室が、好きだよ。 それでも全部伝えよう ← top → 14.07.01 |