あれから一週間。
氷室とは、ほとんど話していない。

『…もしもし』
「もしもし、私、だけど」

夜、氷室に電話を掛けた。
話を聞いてほしい。

?』
「で、電話ならいいでしょ。すぐ終わるし」
『…うん』

深呼吸をする。
氷室の声を聞いて、心を弾ませている自分に気付く。
最近はあの彼と話しても、普通に楽しいだけ。
だけど、氷室と話す今はこんなにも心が躍る。
私、いつの間にこんなに…。

「あのね、私、明日、告白する」
『!』
「…今までたくさん話聞いてもらったから、氷室には言わないとって思って」
『…そう』
「…うん」
『…頑張って』
「うん」

そう言って電話を切った。
これで、もう逃げ道はない。
ちゃんと言わないといけない。

「……」

うまくいかないだろうということはわかってる。
いくはずがない。
今まで私の話を聞いてくれていた人なんだから。
他に好きな人がいるんだから。

でも、伝えなくちゃと思った。
この気持ちを、ちゃんと。





部活が終わった後のこと。
今日もゆっくり部誌を書く。
いつも通り、氷室は一番遅くまで残って自主練だ。

「…ふう」

息を吐く。
自分でも驚くけど、あまり緊張していない。
…結果がわかっているからかな。

「…?まだ残ってたのか」
「あ、氷室」

氷室が帰って来る。
…よし、言わなきゃ。

「あのね、氷室」
「…もう、告白したの?」
「ううん、これから」
「…?」

氷室は不思議そうな顔をする。
彼はもう帰った。
残っているのは、私と氷室だけしかいない。

?」
「…あの、ね。私」

氷室の前に立つ。
心臓の鼓動は落ち着いてる。
氷室の顔を真っ直ぐ見る。

「…私、氷室が好き」


初めて口にした言葉。
「氷室が好き」

そう、好き。いつの間にか、こんなにも、氷室を好きになっていた。
氷室が、好き。


「…ごめんね、急にこんな」
…」

氷室は悲しそうな声を出すと、私をぎゅっと抱きしめた。

「ひ、氷室…?」
、オレも」
「氷室、あの」
「オレもが、好きだよ」

氷室の言葉に、体を硬直させる。
氷室が私を、好き?

「う、うそ」

「だって、氷室」
「好きだよ、が好きだ」

氷室は今まで見たことのないような、熱い表情でそう言う。
気付けば私の頬には涙が伝っていた。

「氷室、私」
「好きだよ」
「…っ」

噛みつくように唇を奪われる。
何度も、何度も。

「…んっ」
「好きだよ」

私が言葉を紡ぐ隙も与えず、氷室はキスを繰り返す。
苦しいけど、嫌じゃない。
…ううん、違う。
嬉しいんだ。

「氷室…」


少しの間、見つめ合う。
氷室が、好きだよ。











それでも全部伝えよう
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14.07.01