昨日は白石と一緒に放課後にご飯を食べて、一緒に帰って。
そんなことをしてたら、こう言われるに決まっている。

さんって白石くんと付き合ってるの?」

昼休み、隣りのクラスの女の子に呼び出されて校庭に行ったら、開口一番にそう言われた。

「…え?」
「だって、白石くんがさん好きって噂流れてからやたら一緒にいるみたいやから…」
「…!」

そうだ、自分のことでいっぱいいっぱいで、噂のことをすっかり忘れていた。

「付き合ってない!付き合ってないよ!」
「そうなん?別に嘘吐かんでええよ」
「嘘吐いたってメリットなんてありませんから!」
「…そうなんや。わざわざありがと。私、ただ気になっただけやからあんま気にせんといて」
「…白石のことが好きなんじゃないの?」
「好きっちゅーか…。私はテニス部のファンみたいなもんや。恋愛感情とはちょっとちゃうっつーか」
「…そうなの?」
「多分、テニス部にキャーキャー言ってる子たちのほとんどがこんなんやと思うで」

そう言うとその女の子は去っていった。

…噂のこと、すっかり忘れてたなんて、私はいつからこんなにマヌケになったんだ。
それにしても、今度こそばっちり広まってしまっているみたいだ。
今日もお昼一緒に食べたりしたら、噂はもっと広まってしまうだろう。
だったら、一緒に食べたりしなければいい話なんだけど、

「…それは嫌」

昨日、一緒に帰ったときに今日はお昼一緒に食べようと約束したし、それに、何より、

(私と白石が付き合っている、そんな噂が広がる危険を冒してまで
 白石をお昼を食べたいかと言われると、正直な話そこまでではない)

ほんのついこの間までそう思ったはずなのに、噂が広まるのは嫌だけど、それでも一緒にいたいと思うようになってしまったのだから、仕方ないじゃない。

「…早く、屋上行かなくちゃ」

屋上を見上げながらそう呟いた。



top 


10.04.09