「…何やってるん?」
「…総会の資料、作ってたの」
「……」

白石は少し気まずそうだ。そりゃ、昨日の今日、あんなことがあったばかりだから当たり前だけど。

、昨日はごめんな」
「別に、白石が謝ることなんて」
「あないなこと言うつもりやなかったんやけど、のつらそうな顔見てたら、つい、なあ」

いつも柔らかく笑っていた白石の表情も、今日は暗い。

「…白石、一個だけ聞いていい?」
「なんや?」
「なんで、昨日いきなりあんなこと言ったの?」

私は白石を真っ直ぐ見つめて言った。

「…俺は別にいきなりのつもりはなかったんやけど」
「そうなの?」
「ずーっと、無理してんなあって思てたから。弁当食うてたときにもちょろっと言ったやろ」
「あ…」

そういえば、お昼にもそう言われて言葉に詰まってしまったっけ。

、友達と喋ってるときとかいつもすっごい笑っとるやん。なのに委員やら仕事やっとるとき、妙につらそうな表情しとったから」
「…つらそうだった?私」
「ああ、にはいつも笑っててほしいからなあ」

白石は寂しそうな表情のまま言った。
私はそんなつもりまったくないけれど、だったらこの手の震えや、言葉が出てこなかったりするのは何でだろう。
白石の言葉に動揺するのは、その通りだったから?

「…私、無理してたのかな」

そう口に出すと、すうっと目の前が開けたような気がした。
手に震えも治まって、心が軽くなる。

ああ、そっか、私、本当に無理してたんだな。
口に出して認めるだけで楽になるなんて、我ながら随分単純なやつ。

きっと、白石に言われなければ気づかなかった。
自分のことなのに、自分が一番わかってないっていうのも変な話だ。

「白石」
「…?なんや?」
「これ、ちょっと手伝ってくれない?」

私は目の前の資料を指差して、白石に笑いかける。
そしたら白石も昨日までのような笑顔を私に向けてくれた。

「お安い御用や」



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10.02.06